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呼吸器外科

融合画像技術による小型肺がんの診断と治療

この記事の内容

拡張透視下気管支鏡を用いた肺がん診療

現実世界にデジタル技術を重ね合わせる技術を、「拡張現実」(Augmented Reality: AR)と呼びます。

この技術を応用したものとして、X線透視の画面上に、CTから得られるデータを重ね合わせて表示する「拡張透視」(Augmented Fluoroscopy: AF)と呼ばれる新しい技術が登場しています。当院では、この技術を気管支鏡(きかんしきょう)に応用しています。

ちなみに気管支鏡とは、肺や気管支の病気を診断するための内視鏡検査で、「肺カメラ」ともいわれるものです。一般的な胃カメラより細くできていて、先端には小型のCCDカメラが搭載されており、外部のモニターで口の中から気管支の中を見ることができます。肺がんや間質性肺炎、感染症などの病気を疑う場合の検査に用いられます。

最近では、画像診断機器の発達に伴って、小さな肺がんも見つけられるようになりました。ただ、小さいために気管支鏡で組織検査をすることが難しいことに加え、手術を行うにしても、がんの正確な場所を見つけて切除することが難しいことが課題でした。

これらのことを解決するために、検査中や手術中にこの拡張透視(AF)を活用し、大きな成果をあげています(拡張透視下気管支鏡(かくちょうとうしかきかんしきょう))。

具体的には、撮影した画像データから立体画像を作製し、その画像上に小さな病変(病気による生体の変化)がある部位を分かりやすく表示します。それをナビゲーション画像としながら、気管支鏡による組織検査(図1)に活用します。

図1 拡張透視を用いた気管支鏡下生検。可視化腫瘍と気管支鏡の残像を投影することで、位置調整に役立てている

加えて、手術の際のマーキング(X線で確認できる金属の小さなコイルを肺の中に留め置く)(図2)を行ったりすることで、肺がんのより精密で正確な診断と治療へとつなげていくことができます。

図2 拡張透視を用いたコイルマーキング。
A:可視化腫瘍とカテーテルの関係、
B:可視化腫瘍とコイル、
C:留置後CTによる真の腫瘍とコイルの関係(緑:腫瘍、赤コイル)

こうした融合画像技術を用いることで、これまで難易度の高かった小さな肺がんの診断や治療の精度が大きく高まることになりました。当科においても新たな取り組みとしていっそう注力しているところです。

執筆者

呼吸器外科 病棟医長・ 講師 河北 直也

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

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