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口腔外科

VR・ARの応用で、安全で精度の高い口腔外科手術を実現

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VR(仮想現実)の口腔外科手術への応用

口や顎(あご)の骨の中には、嚢胞(のうほう)(液体がたまった袋状のもの)や腫瘍(しゅよう)ができることがあり、これらの病気は口腔外科で治療します。手術による摘出や顎の骨を含めた切除などが一般的ですが、顎の骨は歯ぐきや筋肉、皮膚などに覆われているため、直接診察することは困難です。

また、顎の骨の中や周囲にある血管や神経に病気が接していたり、癒着(ゆちゃく)していたりする場合もあり、思わぬ合併症や事故につながってしまうことがあります。

VR(仮想現実)の技術を応用すると、患者さんの画像データから作製した3D画像(図1)をVR空間に再現することが可能になり(図2)、嚢胞や腫瘍の場所、大きさ・形の確認、さらには周囲の血管・神経との位置関係が3次元的にいろいろな方向から観察、把握できるようになります。このような情報を医療スタッフと共有することで、より安全で確実な手術を計画・実施することができるようになります。

図1 従来のCT画像
図2 腫瘍のVR画像構築

AR(拡張現実)の口腔外科手術への応用

顎の骨を扱う口腔外科手術では、患者さんの画像データをもとに手術計画を立て、手術のシミュレーションを行っています。例えば、顎変形症(がくへんけいしょう)といって、受け口や顔のゆがみなど、顎が変形している患者さんに対しては、顎の骨を切ってミリ単位で動かし、きれいなかみ合わせを作るなど顔のゆがみを治す手術を行います。

これまでは、患者さんの画像データでどれだけ顎の骨を移動させるかを計算し、手術中に術者が実際に移動量を測ることで再現していました。ここにAR(拡張現実)の技術を応用すると、手術中に術者が患者さんから目を離すことなく、事前にシミュレーションした骨切り線や、移動情報を3次元的に術野(目で見える範囲)に重ね合わせることができます。

また、骨の中を通っている血管や神経は手術中に骨の外からは見えないため、これまでは術者が画像データを頭の中に入れて、血管や神経を傷つけないよう避けながら手術を行っていました。ARを使えば、血管や神経の位置も術野に重ね合わせられるため、より安全で精度の高い手術を行うことができるようになります。

執筆者

口腔外科 外来医長・講師 髙丸 菜都美

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

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