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消化器内科

日進月歩で進化するがん治療

この記事の内容

3人に1人ががんで亡くなる時代

がんはわが国の死亡原因の第1位を占め、およそ2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなっています。

2023年に発表されたわが国の「がんの統計」では、悪性腫瘍による死亡原因の第1位は肺がん、第2位は大腸がん、第3位は胃がんです(表1)。

表1 わが国における部位別がん死亡者数

表1 わが国における部位別がん死亡者数

男性では肺がんが最も多く、女性では大腸がんが最も多いがんです。罹患者数では(男女計)、大腸がん、肺がん、胃がんの順となっています(表2)。

表2 わが国における部位別がん罹患者数

表2 わが国における部位別がん罹患者数

がんは、進行度合いにより臨床病期(ステージ)I〜Ⅳ期に分類されます。どこのがんも、I期で発見されれば内視鏡手術、縮小手術、放射線治療などにより、ほとんどの症例で完治します。Ⅱ期では、手術(大部分は手術のみで)、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)により約3分の2以上は治りますが、なかには再発する例もあります。Ⅲ期では、手術、放射線治療、化学療法により、がんを取り除くことができますが、後々3分の1以上では残念ながら再発します。

Ⅳ期のがんは、基本的には切除不能とされ化学療法や放射線療法で治療しますが、大部分の症例では完治は難しいとされてきました。しかし、化学療法においては、新しい分子標的治療薬1(ぶんしひょうてきちりょうやく)や免疫チェックポイント阻害薬2(そがいやく)が開発され、2019年にがん遺伝子パネル検査が承認され、治療成績が大幅に改善しています。

例えば、Ⅳ期のがんでも10〜20年以上生きる例や、化学療法によってがんが縮小してI〜Ⅱ期となり、切除できるようになる例も少しずつ増えてきています。また、化学療法を受けて少しでも長く生きていれば、新しい治療薬が承認されることがしばしばあります。

徳島大学病院における新しいがん治療

この特集②では、以下の5つのテーマについて当院の新しい取り組みを紹介します。

1) 進化する胃がんの内視鏡治療

検診などにより早期の段階で発見されたがんは、内視鏡でがんの部分のみを切除して完治することができます。その代表例として、早期胃がんに対する内視鏡治療について説明します。

2) 肺がんに対する薬物療法

従来肺がんは予後(今後の見通し)の悪いがんといわれていましたが、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の登場により大きく治療成績が改善しました。他のがんでも同様に、これらの薬剤によって長く生きられる例が少しずつ増えてきています。

3) 最適化された高精度放射線治療

放射線治療も大きく進歩しています。特に乳がん、頭頸部(とうけいぶ)がん、前立腺がん、子宮頸(しきゅうけい)がん、食道がんなどでよく行われます。

4) 早期乳がんの新しい放射線治療

早期乳がんでは、乳房の美しさを保ったまま放射線治療により完全に治せるようになってきました。

5) がんのゲノム医療

がんの遺伝子パネル検査が承認されてから、その件数は全国的に毎年増加しており、当院でも増えています。

以上のように、がん治療法は日進月歩で進化を遂げています。Ⅳ期のがんでもあきらめないで、医療機関を受診して相談することをおすすめします。

  1. 分子標的治療薬/がん細胞に特有の標的分子を狙い撃ちすることで効果を示す薬 ↩︎
  2. 免疫チェックポイント阻害薬/免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬 ↩︎

執筆者

消化器内科 診療科長・教授 髙山 哲治

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

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