肺がん・縦隔腫瘍手術をダビンチで
当科では、肺がん・縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)1の手術の80%以上を胸腔鏡下(きょうくうきょうか)の手術で行っています。呼吸器外科での通常の胸腔鏡手術(きょうくうきょうしゅじゅつ)は、1つの傷が3~4㎝程度までで、3~4か所の傷からカメラと器具を挿入して手術を行います。傷が小さく、胸壁(きょうへき)・筋肉・肋間(ろっかん)へのダメージが少ないため、体への負担が少ない手術です。
手術支援ロボット・ダビンチを用いた手術も胸腔鏡手術に含まれますが、ダビンチを用いた肺がん・縦隔腫瘍手術は2018年に保険適用になり、全国的には、2020年に4000例以上(手術症例の約10%)のダビンチによる手術が行われ、年々増加しています(写真1)。
当科でも2018年10月から開始し、これまで肺がん・縦隔腫瘍を合わせると約100例と、着実に実績を積み重ねています。
ダビンチ手術では、1cm前後の3~4か所の傷と、切除した肺や腫瘍を取り出すための2~3cmの傷1か所で手術を行います。傷の数は若干多いですが、一つひとつの傷は小さく、通常の胸腔鏡手術と同等、もしくはより精密な手術が可能になっています(写真2)。
ダビンチ手術は、最近になって長期予後(病状についての長期間での見通し)も通常の胸腔鏡手術と比べて同等と報告され、長期的にもその有効性が証明されてきています。
ダビンチの良いところ
ダビンチ手術の良いところは、次のような点があげられます。
①3次元画像で拡大された視野で見られること、②誰にでも起こる手の震えがないこと、③人間の手関節と同じように動く関節のある鉗子(かんし)(組織などを挟む手術器具)を用いて、狭い胸腔内で質の高い手術ができること(通常の胸腔鏡手術では,直線的な鉗子を使用するため、操作の制限がある)、④肋間神経(ろっかんしんけい)の圧迫が少なく、痛みが少ない可能性があること、などです。
当科では、このような利点を持つダビンチ手術を、通常の胸腔鏡手術と同じクオリティで安全に、新しい選択肢として患者さんに提供することができるようになっています。
- 縦隔腫瘍/心臓や食道、気管や大動脈、胸腺などの器官がおさまる空間である縦隔内に発生した腫瘍のこと ↩︎