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泌尿器科

前立腺がんから始まったロボット支援手術のさらなる発展

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泌尿器がんに対するロボット支援手術

2012年にロボット支援手術が前立腺がんに対して保険適応になりました。当院では保険適応になる前の2011年にダビンチを導入し、前立腺がんに対する手術を開始しました。

多くの優れた特徴により、前立腺がんのロボット支援手術は、開腹術よりはるかに出血量が少なく、輸血をすることはほとんどなくなりました。また前立腺を除いた後、骨盤の最も奥深くにある膀胱(ぼうこう)と尿道をつなぐとき(吻合(ふんごう))も精密に縫合(ほうごう)できます(図1)。

図1 膀胱と尿道の吻合

このロボット支援前立腺全摘除術(ぜんりつせんぜんてきじょじゅつ)は、当科ではすでに800例を超え、安定した手術が行われています。また腎がんは、腫瘍が小さい場合に、腎臓の機能を温存するために、腫瘍とその周囲の正常な部分のみを切り取る腎部分切除術が行われています。

この手術は、腫瘍を切除した後は、その切開した面を糸で縫い合わせて閉じ、その後、腎臓自体も縫い合わせます。その間、腎臓の動脈を止めているために、残る腎臓にはダメージ(機能の低下)が起きます。ロボット支援手術では、腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)よりも動脈を止めている時間が短く、精密に切ったり、縫い合わせたりすることができるため(図2)、術後の合併症も少なくなっています。当科では年間約30例のロボット支援による腎部分切除術を行っています。

図2 腎部分切除

膀胱がんは、膀胱を摘出する場合には、腸管などを用いて尿が流れる道すじを変えます。ロボット支援膀胱全摘除術(ぼうこうぜんてきじょじゅつ)では、開腹術と比べて出血量はかなり少なく、体への負担も少ないため、術後は早いうちに歩行や食事を開始できます。手術の負担が大きい80歳を超える患者さんでも、体調を考慮したうえでこの手術は可能です。現在、当科では年間約15例の手術を行っています。それ以外にもロボット支援腎摘除術(じんてきじょじゅつ)やロボット支援副腎摘除術(ふくじんてきじょじゅつ)もすでに導入しています。

泌尿器良性疾患に対するロボット支援手術

高齢の女性などでは、子宮、膀胱、直腸などが、陰部から垂れ下がってしまう病気があります。この病気に対し、膣を骨盤にメッシュで固定して、骨盤内の臓器が体から脱出しないようにするロボット支援仙骨膣固定術(せんこつちつこていじゅつ)も当科で導入しています。手術時間が短縮され、治療後の経過も非常に良好です。

また尿管に狭い部位があり、痛みや腎臓の働きが悪くなる腎盂尿管移行部狭窄症(じんうにょうかんいこうぶきょうさくしょう)という病気に対しては、尿管の狭い部分を切除して、腎盂と尿管を繊細に縫合できるロボット支援腎盂形成術(じんうけいせいじゅつ)も導入しています。

執筆者

泌尿器科 診療科長・教授 古川 順也

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

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