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小児科

ゲノム医療を駆使して小児医療はさらに進む

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ゲノム医療がもたらした小児疾患診断の革新

これまでの小児の遺伝性疾患は、家族の病歴や現れている症状、検査での結果をもとにして候補となる病気をあげて、その原因遺伝子や領域を一つひとつ確認し、その結果を統合して診断していました。一方でまれな疾患の場合には、病気の特定を絞り込めず原因不明とされていました。

最近は、まず網羅的な遺伝学的検査が行われ、染色体が部分的に欠けていたり、遺伝子配列に異常があるなどの変化があることから、疾患が絞り込まれて症状とも合うことで早期に診断ができるようになっています。この網羅的な解析技術としてマイクロアレイ染色体検査や次世代シークエンスがあります(図1)。

図1 代表的な遺伝学的検査

マイクロアレイと次世代シークエンス

スライドガラスにはりつけたプローブにDNAをはりつけるマイクロアレイ検査が2021年10月に保険適応になり、高い解像度でコピー数の変化を検出することができ、核型分析では検出できなかった微細な欠失や増加をすべてのゲノムの領域にわたって検出できるようになりました。

さらに、遺伝子配列を高速かつ大量に解読する次世代シークエンスも行われるようになり、2015年から※1未診断疾患イニシアチブ(IRUD)によってすべての※2エクソーム解析が行われています。参加した診断のついていない患者さんの約6割に、診断が得られています(図2、図3)。

図2 小児科からのIRUD提出内訳(2018-2022年度)
図3 小児科でのIRUD結果

当院はIRUD拠点病院としてこの取り組みに積極的に参加しています。早期診断により脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)は遺伝子治療が可能となっており、ポンペ病などの先天性代謝異常症(せんてんせいたいしゃいじょうしょう)にも酵素補充療法(こうそほじゅうりょうほう)が可能となっています。今後も、子どもたちの病気を早期に診断して家族に安心してもらえるようにゲノム医療を行っていきます。

執筆者

小児科 特任講師 須賀 健一

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

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