泌尿器腫瘍における内視鏡手術
当院泌尿器科では、腎がん、腎盂尿管(じんうにょうかん)がん、副腎腫瘍(ふくじんしゅよう)に対し、早期から腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)(図1)を導入しています。腹腔鏡手術は、開腹手術と比べて小さな傷で腹腔内(お腹(なか)の空間)にいくつかの筒(ポート)を留め置き、その中に内視鏡(カメラ)やハサミなどの器具を入れ、腹腔内で腎臓、尿管、副腎を周囲から剥(は)がし、袋に詰めた後、傷を最小限に伸ばして体外へと取り出します。出血量は少なく、手術後の痛みが少なく、回復は早いという利点があります。
まっすぐで曲がらない長い器具を用いて手術を行うことなど、開腹手術と異なる技術が必要になりますが、当院では合併症も少なく、安全にこれらの手術を行っています。
泌尿器良性疾患に対する内視鏡手術
腎・尿管結石(にょうかんけっせき)に対する内視鏡手術は、大きく進歩しています。経尿道的尿管砕石術(けいにょうどうてきにょうかんさいせきじゅつ)(図2)は、尿道からカメラを膀胱(ぼうこう)内に入れ、その後、誘導のための細い柔らかいワイヤーを尿管内に入れます。それをガイドに尿管鏡を尿管内に挿入しますが、より解像度が高く、先端を自由に曲げられる優れた尿管鏡の開発、結石を細かく砕くレーザー装置の進歩によって、より短時間に安全に腎・尿管の石を砕くことができるようになっています。
さらにレーザー装置については、レーザーの衝撃で結石が跳ねて細かく砕くのが難しい場合には、設定により結石の動きを最小限にしたり、また結石を塵(ちり)のように細かく砕き、潅流液(かんりゅうえき)(臓器や組織の洗浄などに使用される液体)で体外に排出させたりできるようになっています。
また、膀胱尿管逆流(ぼうこうにょうかんぎゃくりゅう)という病気では、尿が腎臓に逆流することで腎盂腎炎(じんうじんえん)が起こりやすくなり、高熱が出て、腎臓の機能が低下することがあります。
標準的には開腹して尿管と膀胱をつなぎ直す手術が行われていますが、当科では2015年から膀胱に直接ポートを挿入し、カメラを膀胱内に入れ、開腹手術と同じ手術を行うことで、術後の痛みや体の負担の少ない気膀胱下尿管膀胱新吻合術(きぼうこうかにょうかんぼうこうしんふんごうじゅつ)という手術(図3)を導入しています。