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整形外科

きわめて身体にやさしい高齢者向け脊椎全内視鏡手術

この記事の内容

椎間板ヘルニアから狭窄症へと進む技術革新

腰痛治療できわめて体の負担が少ない手術治療は、局所麻酔で行う全内視鏡で8mmの大きさです。図1がその切開創です。中央にあるのがこれまでの腰椎(ようつい)手術の傷跡で、比べると小さな切開で行われていることが分ります。

図1 手術切開創部

当初は椎間板(ついかんばん)ヘルニアのみが対象でしたが、当院では技術を進化させ、高齢者の腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)に応用しています。腰部脊柱管狭窄症には椎間孔狭窄(ついかんこうきょうさく)、陥凹部狭窄(かんおうぶきょうさく)、中心性狭窄(ちゅうしんせいきょうさく)の3種類があります。このうち、陥凹部狭窄と中心性狭窄に対する局所麻酔・全内視鏡手術は徳島大学病院が世界で初めて行いました。

局所麻酔で傷が小さく超高齢者でも可能

図2はMRI(磁気共鳴画像)です。左の陥凹部狭窄症で、強い左下肢痛(ひだりかしつう)があります。黄色の丸印が狭窄部分です。90歳と高齢で、心肺機能も悪く全身麻酔がかけられませんでした。局所麻酔で会話をしながら、手術を行いました。術中の内視鏡画像でも圧迫がなくなった神経根(しんけいこん)が明瞭です。

図2 狭窄症のMRIと除圧後内視鏡所見

図3が手術前後のCT画像で、狭くなった骨が完全に削られていることがわかります。手術後2時間で、痛みもなく歩行が始められました。

図3 狭窄症手術:術前後CTの比較

固定術も内視鏡を使えば小さな切開で可能

すべり症や側弯症(そくわんしょう)を伴う場合、固定術が行われます。通常、背筋を大きく切開しますが、当院では全内視鏡を使用して体にやさしい固定術を行っており、KLIF手術と呼んでいます。図4のような小さい5か所の切開で固定術が可能です。4本のスクリューと椎間板内ケージを小さく切って入れ固定します。これは現時点で世界最小といってもよい侵襲脊椎固定手術(しんしゅうせきついこていしゅじゅつ)です。  

図4 すべり症の内視鏡手術

MRI画像でもすべり症が改善するとともに、脊髄(せきずい)神経の圧迫が改善しています。

執筆者

整形外科 診療科長・教授 西良 浩一

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

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