脳腫瘍に対する神経内視鏡手術
脳腫瘍(のうしゅよう)は、頭蓋骨(ずがいこつ)内にできる腫瘍の総称で、脳だけでなく脳を包む膜や神経などさまざまな場所から発生し、良性腫瘍と悪性腫瘍を含めて100種類以上に分類されます。画像検査や病理検査、遺伝子検査を行うことで診断し、その診断結果や個々の状態に応じて治療法を決定します。
脳腫瘍の主な治療法として手術があげられますが、手術方法として、頭蓋骨を開け顕微鏡を見ながら腫瘍を摘出する開頭腫瘍摘出術(かいとうしゅようてきしゅつじゅつ)と、内視鏡を用いた神経内視鏡手術(しんけいないしきょうしゅじゅつ)があります。神経内視鏡手術として代表的なものが、経鼻的下垂体腫瘍摘出術(けいびてきかすいたいしゅようてきしゅつじゅつ)です。
経鼻的下垂体腫瘍摘出術の対象となる脳腫瘍は、下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)、ラトケ嚢胞(のうほう)、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)などです。経鼻的下垂体腫瘍摘出術は、鼻から頭の中心にある下垂体部(かすいたいぶ)へ到達し、内視鏡を用いて腫瘍に接していき、拡大して確認しながら摘出することができる体に負担の少ない手術方法です(図)。
経鼻的下垂体腫瘍摘出術の実際
経鼻的下垂体腫瘍摘出術の手術前には、3D画像解析ソフトを用いてCTやMRIなどの検査画像を合わせて、腫瘍とその周囲にある血管や神経・副鼻腔(ふくびくう)との関係を把握しながら術前シミュレーションを行います。
手術時はこれらの画像を手術用ナビゲーションシステムに取り込むことで、自動車のナビゲーションと同様に、実際に操作している場所がどこであるか、近くに重要な血管がないかどうかなどを把握することができます。
また、当院で用いている神経内視鏡は4Kシステム(写真1)を採用しており、高精度な画像を大画面で見ながら手術を行うことができます。実際の手術場では、術者はナビゲーションシステムの画像、4K内視鏡の画像を大画面で確認しながら手術操作をしています。これらのシステムを利用することで、体に負担が少ない安全な手術を行っています(写真2)。