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むし歯科

低侵襲の最新むし歯治療〜コンポジットレジン接着治療

この記事の内容

健康な歯を最大限に保存する接着治療法

むし歯の予防と治療において、「ミニマルインターベンションデンティストリー(低侵襲(ていしんしゅう)歯科医療)」という考え方は、患者さんの負担を軽減し、歯を健康に保つ方法として有効で、世界的にも広まっています。

中でも、健康な歯を最大限に保存可能な、コンポジットレジン(歯の色に似たセラミックスとプラスティックの複合材料)を用いた接着治療が近年注目されています。優れた接着材を利用することで、健康な歯の部分を削ることなく失われた歯を再建し、機能と見た目をその日のうちに回復することができます。多くの場合で麻酔の注射も不要です。

コンポジットレジン接着治療は今では、典型的なむし歯だけでなく、歯のすり減り、少数の歯を失ったときのブリッジ、ケガなどによる歯の欠けなどにも応えることができるようになっています(図1A、図1B)。

図1A コンポジットレジン修復による前歯の治療(術前)
さまざまな前歯の治療(術前の様子)。歯の変色、隙間、形態不良、すりへりなどが生じた欠損が認められる。
図1B コンポジットレジン修復による前歯の治療(術後)
さまざまな前歯の治療(術後の様子)。コンポジットレジン修復によって即日のうちに低侵襲に再建された。

精密治療とデジタル治療への新展開

コンポジットレジン修復の成功のためには、肉眼では見えないレベルの高い精度が要求されます。万が一、むし歯の取り残しや、詰め物の隙間などが生じれば、むし歯の再発のリスクが高まります。

当科では、歯科用顕微鏡などの治療設備を整え治療の精度を高め、専門医を中心に患者さんの安心を実現する診療に努めています(図2)。

図2 歯科用実体顕微鏡を使ったコンポジットレジン修復治療の様子
歯科用接着材を塗布した後、細い針状の器具の先端から、むし歯により失われた歯の欠損部にコンポジットレジンを流し込んでいる。

さらに、口腔内スキャン、CAD、3Dプリンティングなどの近年発展著しい、デジタル技術に関する研究成果をもとに、さらなる治療のスマート化、高度標準化を世界に先駆けて行っています(図3)。

図3 デジタル技術を活用したコンポジットレジン修復治療
左上:歯列情報のコンピューターへの取り込み。
右上:コンピューター上での咬み合わせの診査分析。
左下:コンピューター支援による最終修復形態のデザイン。
右下:デザインから製作した透明な型枠を利用しコンポジットレジンを流し込み、光により硬化させている。

執筆者

むし歯科 診療科長・教授 保坂 啓一

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

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