メニュー
歯周病科

歯周病の治療で健康寿命を伸ばす

この記事の内容

歯周病がフレイルのカギになる

栄養不足あるいは日常的な運動量が不足すると、「サルコペニア」という筋力減少の状態に陥ります。人とのかかわりが薄くなって“出不精”になると、さらに運動量が落ちるという悪循環に陥るといわれています。つまりフレイル予防には、「栄養」「運動」「社会参加」の3つの柱が重要となります。

歯周病は、歯周病の原因となる細菌(歯周病原細菌(ししゅうびょうげんさいきん))により、歯茎(はぐき)(歯肉(しにく))の炎症や歯を支えている骨(歯槽骨(しそうこつ))が失われていく病気で、大人が歯を失う原因の第1位となっています。

歯がないと食べられない=低栄養、口臭や歯を失った見た目から人と会いたくない=社会参加の低下、そして歯周病原細菌感染が骨格筋の代謝異常を引き起こす(サルコペニアにつながる可能性)=運動量の減少というように、まさしく歯周病がフレイルのカギとなることが分かります(図)。

図 歯周病とフレイルの関係

歯周病治療でオーラルフレイル予防

オーラルフレイルとは、フレイルの前段階として起こる、口の中の健康への関心の低下や口の機能(口腔機能)の衰えを指します。

オーラルフレイルを抱えた人は将来、身体的フレイル発生リスクが2.4倍、要介護状態認定が2.4倍、死亡率が2.1倍となることが報告されています。2018年から「口腔機能低下症(こうくうきのうていかしょう)1」が医療保険病名として採用され、口腔機能の衰えを評価し、歯科医院で診断する基準ができました。

オーラルフレイルの段階での早期発見・早期介入がフレイルや要介護状態の予防につながります。歯周病治療により、口の中の健康への関心を持ってもらい、口の中を清潔に保ち、口の中のささいな変化を見逃さず、歯を失う本数を減らし、残った歯をいかに機能・維持させるかがとても大事になリます。

そのためにも、歯を失ったところを入れ歯や被せ物で補う補綴(ほてつ)治療や生活習慣病のコントロールなど、歯周病科以外の歯科・医科との連携も必要になります。

オーラルフレイルやフレイル予防のため、まずは自分の口の中に興味を持つこと、「かかりつけ歯科医」を持つことをおすすめします。

  1. 口腔機能低下症/加齢によって、口腔内(口の中)の感覚や咀嚼(そしゃく)・嚥下(えんげ)・唾液分泌などの機能が少しずつ低下していく症状 ↩︎

執筆者

歯周病科 助教 板東 美香
歯周病科 診療科長・教授 湯本 浩通

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

この記事をシェアする
この記事の内容