メニュー
循環器内科

Q01:動脈硬化から患者さんを守るための新しい治療

この記事の内容

動脈硬化性疾患とは?

日本人において悪性腫瘍(しゅよう)に次ぐ死因の第2位は心臓の病気で、その約半数を動脈硬化性疾患の代表ともいえる狭心症や心筋梗塞(しんきんこうそく)などの虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)が占めるといわれています。虚血性心疾患とは、心臓を鼓動させている筋肉に栄養や酸素を送る冠動脈(かんどうみゃく)に、動脈硬化などの血管障害が生じ、血液が十分に行かなくなる病態です。高脂血症や高血圧、糖尿病、喫煙などの生活習慣による危険因子により血管が細くなり、身体的または精神的ストレスがきっかけで血管の閉塞(へいそく)が起こると考えられています。

動脈硬化性疾患の治療方法を教えてください

冠動脈の狭窄(きょうさく)(血管が細くなること)が高度に進行すると、体を動かしているときの胸部症状が現れます。

動脈硬化の治療としては、循環器内科医が行うスタチンを中心とした薬物療法とカテーテル治療があります。また、心臓血管外科医が行う冠動脈バイパス手術もカテーテル治療が適さない病変(病気による生体の変化)に対しては有効な手段です。

過去の報告では、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を高度に低下させると、動脈硬化の病変に対する安定化は得られますが、狭窄の度合いの改善はわずかであり、高度に進行した冠動脈の病変に対しては薬物治療とカテーテル治療が必要になります。

2013年からはバルーン(狭くなった血管を押し広げるための風船状の器具)に再狭窄抑制物質を塗った「薬剤塗布バルーン」(図1)が使用できるようになり、良好な臨床成績も確認されています。

図1 薬剤塗布バルーン

また石灰化1病変に対しては、「ロータブレータ」というドリルのようなもので冠動脈内石灰化を切削(切り削る)していましたが、石灰化の削りカスが末梢塞栓(まっしょうそくせん)を起こしたり、偏心性(へんしんせい)の病変に対してはうまく削れなかったりすることがありました。

数年前から「ダイヤモンドバック」という、後方にもダイヤモンドチップを搭載した「偏心性石灰化切除(へんしんせいせっかいかせつじょ)カテーテル」(図2)が使えるようになっています。さまざまな道具を病変に応じて使い分け、安全で効果的な手技をめざしています。

図2 偏心性石灰化切除カテーテル

カテーテルで治療できるのは狭心症や心筋梗塞だけですか?

カテーテル治療とは、カテーテルと呼ばれる細い管を、足の付け根などにある動脈から挿入し、病変部まで到達させて治療する方法です。

1977年に世界で初めて行われたカテーテル治療は、これまでに大きな進歩を遂げました。現在では、外科手術と比べて患者さんの体に負担の少ない治療として活用されています。

近年の超高齢化社会において、弁膜症(べんまくしょう)(大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)や僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう))を有する患者さんは年々増加傾向にあります。

これまでの大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症に対する治療は開胸による外科的手術療法が原則でしたが、「経カテーテル的大動脈弁置換術(べんちかんじゅつ)」(TAVI(タビ)、図3)やMitraClip(マイトラクリップ)(僧帽弁クリップ術)が実施されるようになり、良好な成績が得られています。

図3 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)の概要
足の付け根などからカテーテルという管を挿入して心臓まで到達させ、傷んだ大動脈弁の中に、新しい人工弁を植え込みます。
出典:トーアエイヨー株式会社、インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラスより

心筋梗塞のカテーテル治療が終わったあと気をつけることは?

カテーテル治療が終わったあと注意すべきこととしては、まずは抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)(血液をサラサラにする薬)について、定められた量を、指示のあった期間きちんと内服することが重要です。

最新のガイドラインでは、抗凝固薬(こうぎょうこやく)(血液を固まりにくくする薬)の内服の有無と血栓リスク(血が固まりやすいかの指標)によって、抗血小板薬を2剤続ける期間が決定されます。少し複雑でもあり、担当の先生と相談して飲み方を守ってください。

予定されていた期間より早く薬を止めるとステント血栓症が生じる可能性があり、注意が必要です。以前は抜歯の際に中止していましたが、最近は中止せずに抜歯できることも多いです。自己判断で中止せずに必ず担当の先生にご相談ください。

  1. 石灰化/組織にカルシウムが沈着すること ↩︎

執筆者

循環器内科 総務医長・講師 山口 浩司

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

循環器内科の特徴

診療科長・教授 佐田 政隆

※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

特色

現在、日本で認可されている最高水準での循環器診療を行っています。詰まった血管のカテーテル治療(風船で血管を押し広げる治療)、不整脈のカテーテル治療、ペースメーカー、植え込み型除細動器、超音波検査、CT、MRIによる画像診断など、熟練医師が最新の機器を用いて行います。

2022年度診療実績/冠動脈造影検査713件、冠動脈カテーテル治療216件、アブレーション(カテーテルによる不整脈治療)181例、ペースメーカー植え込み49件、植え込み型除細動器9件、心臓再同期治療9件、末梢血管カテーテル治療40件、経カテーテル的大動脈弁置換術64件。

主な対象疾患

心筋梗塞、狭心症、不整脈、大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、心不全、肺高血圧、高血圧、心筋症など

参考URL

この記事をシェアする
この記事の内容