間質性肺炎とは?
肺は、「肺胞(はいほう)」と呼ばれるブドウの房のような小さな部屋がたくさん集まってできています。私たちが吸った空気が、気管や気管支を通って肺胞に運ばれると、肺胞の壁(間質(かんしつ))の中にある血管に酸素が取り込まれ、同時に二酸化炭素が排出される「ガス交換」が行われます。これを「呼吸」といいます。間質性肺炎(かんしつせいはいえん)とは、さまざまな原因から間質に炎症や損傷が起こることで、厚く硬くなり(線維化)、ガス交換がうまくできなくなるために、咳(せき)が出たり息苦しくなったりする病気です。
間質性肺炎はどんな症状ですか?
主な症状は「咳」と「労作時呼吸困難(ろうさじこきゅうこんなん)」です。咳は「乾性咳嗽(かんせいがいそう)」(図1)という、痰(たん)の出ない乾いた咳(空咳)になります。
「労作時呼吸困難」(図2)は、階段や坂道を上ったときに息切れを感じることから始まります。病気が進行すると、わずかな距離を歩いたり、着替えなどの日常的な動作を行ったりするだけでも息切れを起こすようになります。
そのほかにも、「倦怠(けんたい)感」や「体重減少」「ばち指」などの症状が現れることがあります。
間質性肺炎の検査・診断方法は?
間質性肺炎は原因の有無や病気の型(病型)によって、治療方針が大きく変わります。よって、間質性肺炎の検査は、「どの病型か」を見分けて判別することが主な目的になります。
- 呼吸機能検査
肺活量や、ガス交換能1を調べる検査です。 - 血液検査
進行度と相関する「間質性肺炎マーカー」や、膠原病(こうげんびょう)の存在を示す自己抗体などを検査します。 - 気管支鏡検査(写真、図3)
生理食塩水で肺の一部を洗浄する「気管支肺胞洗浄」と、肺の一部を少量採取する「経気管支肺生検(けいきかんしはいせいけん)」があります。 - 胸腔鏡下肺生検(きょうくうきょうかはいせいけん)
肺組織を外科手術で採取します。
このような検査結果に問診や身体所見を組み合わせて、間質性肺炎の病型の診断を行います。
また当科では、より進歩した診断方法の開発をめざす臨床試験を数多く行っています。
特発性間質性肺炎に対する多施設共同前向き観察研究(JIPS REGISTRY)という、間質性肺炎の診断と治療、病気の経過のデータを全国から集めて再検討する臨床試験に参加しています。
この臨床試験では、同時に血清を患者さんから集めて解析することで、病気を見つけるのに有用な新しい血液検査項目を見つけようとする研究も行っています。
そのほか、多分野での合議による間質性肺炎診断に対する多施設共同前向き観察研究(PROMISE STUDY)に参加しています。
これは、診断に際して呼吸器内科医・放射線科医・病理医が合議を行う集学的検討を全国的な規模に発展させようとする研究です。
日本全体が一つになって、こうした検討を行えるような環境を構築し、さらには集められたデータをもとに、診断に有用なAIの開発をもめざす臨床試験です。
間質性肺炎の治療方法は?
原因が明らかな間質性肺炎に対しては、原因となる物質や病気のもとに対する治療が行われます。
治療薬の中心となるのは抗炎症薬(ステロイドや免疫抑制剤)と抗線維化薬(こうせんいかやく)です。
原因を特定できない特発性(とくはつせい)間質性肺炎の場合は、病型によって治療方針が変わります。抗炎症薬で治療可能な病気の型もありますが、最も治療が難しいのは「特発性肺線維症(とくはつせいはいせんいしょう)(IPF)」です。特発性肺線維症には抗炎症薬が無効なため、抗線維化薬であるピルフェニドンやニンテダニブが使用されます。しかし、これらの抗線維化薬はあくまで病気の進行を抑えることが目的であり、病気を完治できるものではありません。
そこで私たちは、IPFに対する臨床試験や治験に積極的に取り組んでいます。厚生労働省が主催する研究事業の「びまん性肺疾患調査研究班」に分担研究者として参加し、全国あるいは国際共同臨床試験に参画することで、積極的に新しい薬剤や診断法の開発に貢献しています。
最近ではIPFの新規治療薬候補であるTAS-115の第Ⅱ相臨床試験、同じくIPFの新規治療薬候補であるBI1015550の第Ⅲ相臨床試験に参加しています。
- ガス交換能/呼吸器官によって体内に酸素を取り入れ、体内から二酸化炭素を排出するしくみ ↩︎
呼吸器・膠原病内科の特徴
診療科長・教授 西岡 安彦
※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。
特色
呼吸器専門医、リウマチ専門医に加え、感染症専門医、アレルギー専門医、がん薬物療法専門医など、あらゆる領域の専門医が在籍しており、臓器横断的に内科診療が可能です。
基礎研究および臨床研究に積極的に取り組んでおり、国際共同治験や自主臨床試験など臨床研究にも多数、参画しています。外来再来患者数は約2,000人/月、外来化学療法数は約2,400症例/年、気管支鏡検査件数は約300件/年。
主な対象疾患
間質性肺炎、COPD、肺がん、感染症、喘息、アレルギー、関節リウマチ、膠原病など