骨粗しょう症とは?
骨粗(こつそ)しょう症(しょう)は骨の強度の低下を伴い、骨折のリスクが増大する疾患です。わが国では男性で約300万人、女性で約1,000万人が骨粗しょう症であると推計されています。
骨粗しょう症の患者さんが骨折を起こすと、ADL(日常生活動作)およびQOL(生活の質)が低下し、重症の際には寝たきりになります。骨粗しょう症の予防と治療の目的は、患者さんの骨折を防ぐとともに、運動機能を含む骨格の健康とQOLを維持することです。
骨粗しょう症はどんな症状ですか?
骨粗しょう症は加齢によって増加する病気です。
病気になる割合は閉経後の女性が高くなっており、特に70歳以上の女性は約半数が骨粗しょう症を有していると考えられています。
骨粗しょう症の早期発見につなげやすいのは、椎体(ついたい)(背骨)の圧迫骨折による症状で、身長低下(20歳ごろに比べて2cm以上の低下)、背骨の変形(背中が丸くなる円背)、立ち上がるときや重いものを持ったときに背中や腰が痛むといった状態がみられます(図1)。
ただし、椎体の圧迫骨折があってもその半数は痛みを伴わないので注意が必要です。
骨粗しょう症の検査・診断方法は?
骨粗しょう症の診断は、脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折があるかないか、また骨密度(骨量)の評価によってなされます。
脆弱性骨折は、気づかないうちに椎体が圧迫骨折を起こしていた、転倒程度の軽い外力により手首や肋骨(ろっこつ)、大腿骨(だいたいこつ)の付け根を骨折してしまった、などが該当します。
骨密度は腰椎や太ももの付け根の骨のX線検査により評価します。なお、骨粗しょう症には加齢により進んでいく原発性骨粗しょう症と、ホルモン異常、栄養状態の悪化、ステロイド薬などの投与や関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病などに伴ってみられる続発性(ぞくはつせい)骨粗しょう症があります。
骨粗しょう症の治療方法は?
続発性骨粗しょう症では、一般的な治療薬の効果が乏しいため、まずは骨密度が低下する原因になる基礎疾患を治療します。これまでにかかった病気や現在ある症状、服用中の薬剤などは、基礎疾患を診断するうえで重要な情報です。
骨粗しょう症の治療薬には、骨を壊す働きを抑える骨吸収抑制薬、骨を作る働きを高める骨形成促進薬、骨の作り替えのバランスを整える骨代謝改善薬があります。これらを患者さん個々の病態に合った組み合わせで使用します。
また、抗体療法(こうたいりょうほう)や酵素補充療法(こうそほじゅうりょうほう)など、特殊な骨粗しょう症の病態に対する新たな治療法もあります。こちらについては、ホルモンおよび酵素活性の測定や遺伝子解析などによる診断が必要となります。
骨粗しょう症の予防方法は?
一般に骨量は20歳前後で最大となり、これが高いほど骨粗しょう症の発症を遅らせることができます。若い年代における予防法として、十分な量のカルシウムおよびビタミンDの摂取と運動が有効です。
図2にカルシウムおよびビタミンDを多く含む食品を示しています。食品由来のビタミンDは紫外線により活性化されるため、適度な日光浴も効果的です。
また、骨は力学的な負荷がかかると丈夫になりますので、ジョギングや筋力トレーニングなどもおすすめです。中高年者にも効果的ですが、運動に関しては転倒リスクの上昇がないか、強めの運動を避けた方がよい他の病気の合併はないか、などの評価が必要です。
また、「痩せ」は骨折のリスクであり、適正体重の維持が求められます。さらに、禁煙とともに、節酒(日本酒で1合、ビールで500ml程度まで)が望ましいでしょう。
内分泌・代謝内科の特徴
診療科長・教授 遠藤 逸朗
※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。
特色
糖尿病(1型・2型糖尿病、妊娠糖尿病、高齢者糖尿病)、高度肥満症、骨粗しょう症を含む骨カルシウム代謝異常症および内分泌疾患に対する専門診療グループがあり、最新の高度医療を提供しています。
さらに、外科、脳神経外科、腎臓内科、眼科、放射線科、産科婦人科、精神科神経科などと連携して、内分泌代謝疾患すべてにおいて当院のみで診断・治療を完結できます。フレイル、ロコモ、サルコペニアに関しても、他科と協調して評価・介入治療が可能です。
主な対象疾患
メタボリック症候群(2型糖尿病、脂質異常症を含む)、尿酸代謝異常症、肥満症などの生活習慣病や、骨粗しょう症を含むカルシウム・リン代謝異常症、1型糖尿病などの代謝疾患全般ほか内分泌疾患全般