乳がんとは?
乳がんは乳房にできる悪性の腫瘍(しゅよう)のことで、しこりや皮膚の変化、乳頭分泌が生じることがあります。
乳がんにかかる方は年々増加しており、年間9万人以上の日本人が乳がんを発症しています。約9人に1人がかかるとも言われ、女性のがんの中で第1位になっています。ただし、昨今の治療の進歩により治るがんが多いのも事実で、乳がんを治すためにも早期発見、早期治療が重要です。乳がん検診を受けること、「ブレスト・アウェアネス」を実践することが必要です。
乳がんはどんな症状ですか?
乳がんの初期症状としては、しこりや皮膚の変化を認めたり、乳頭から分泌物が生じたりすることがあります。ときには脇のしこり(リンパ節(せつ))で気づくこともあります。
このような症状を見逃さず、早く変化に気づくためにブレスト・アウェアネスの実践が必要となります。
ブレスト・アウェアネスとは乳房を意識する生活習慣のことで、①自身の乳房を知ること、②早く乳房の変化に気づくこと、③乳房の変化に気づいたらすぐに医師へ相談すること、④40歳になったら乳がん検診を受けることが大事といわれています(図1)。こうした意識によって日頃から自身の乳房を知り、変わりがないかをチェックすることが大切です。
徳島県では、ご当地キャラクターの「すだちくん」とともに、乳がんの早期発見・早期治療の大切さを伝えています(図2)。
乳がんの検査・診断方法は?
乳房の検査としては、マンモグラフィ、超音波検査が有用です。これらの検査を行った後、がんが疑われた場合に、針を刺して組織を採取する「針生検」を行い診断を確定します。
そして、がんの広がりを確認するために乳房MRI検査、転移の有無を確認するためにCT検査などを行います。
乳がんの治療方法は?
乳がんの治療には手術、薬物療法、放射線治療の3つがあり、これらをうまく組み合わせて治療を行います。
乳房手術には乳房部分切除術(いわゆる乳房温存手術)と乳房全切除術があり、同時に再建手術(乳房の膨らみを作る)を行うことも可能です。
再建手術には人工物や自家組織(自身の脂肪や筋肉)を用いる方法があります。また脇のリンパ節の手術も同時に行います。
乳がんの薬物治療を行ううえで最も大事なことは、がんの性質を知ることです。女性ホルモンの関与を調べるホルモンレセプターや、HER2(ハーツー)と呼ばれるがんの増え方にかかわる因子を調べます。これらの発現に応じてサブタイプと呼ばれるグループ分けを行い、サブタイプに応じて、使用する薬剤などの治療戦略が異なってきます(図3)。
さらにはサブタイプだけではなく、薬剤の効き具合やがんの再発リスクを考慮し、各々にベストな治療を選択していきます。
乳がんの予防方法は?
乳がんを予防するためには飲酒を控え、閉経後の肥満を避け、適度な運動を行うことが良いといわれています。そして予防に加え、早期発見のための定期検診がとても大事です。
乳がん検診では40歳以上の女性を対象に、2年に1回のマンモグラフィ検診が行われています。
これはあくまで自覚症状のない方が対象で、しこりや乳頭分泌など症状がある場合には検診ではなく、かかりつけ医や専門医への受診を行うことが欠かせません。
また、血縁者に乳がんにかかった方がいる場合には、乳がん発症リスクが上がることが知られています。
必要以上に若い年齢でマンモグラフィ検診を受けることはおすすめできませんが、適切な検診を受けていただくことが大事です。
食道・乳腺甲状腺外科の特徴
診療科長・講師 後藤 正和
※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。
特色
食道、乳腺、甲状腺疾患の検査・治療を担当しています。幅広い知識と高度な技術を持った専門スタッフが安心できる医療を提供します。
手術実績(2022年)/食道手術27例(うち食道がん手術22例)、乳腺手術305例(うち乳がん手術272例)、甲状腺手術66件(甲状腺がん36例、副甲状腺疾患7例、内視鏡下手術10例)。
主な対象疾患
食道疾患(食道がん、食道アカラシア、逆流性食道炎など)、乳腺疾患(主に乳がん)、甲状腺疾患(甲状腺がん、バセドー病など)や副甲状腺疾患(原発性副甲状腺機能亢進症)など