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泌尿器科

Q11:高度に進歩する泌尿器がんの診断・治療〜腎がん・前立腺がん・膀胱がん

この記事の内容

泌尿器がんとは?

泌尿器がんには、腎がん、腎盂尿管(じんうにょうかん)がん、膀胱(ぼうこう)がん、前立腺がん、陰茎がん、精巣腫瘍(せいそうしゅよう)などがあります。この中で特に多いのは前立腺がん、膀胱がん、腎がんです。発生に関係すると考えられる要因は、腎がんでは、肥満、喫煙、高血圧、肉や乳製品の過剰摂取、膀胱がんでは喫煙、職業性発がん物質へのばく露、前立腺がんでは欧米型の食事パターン、肥満、カルシウムの過剰摂取、喫煙などがあげらます。手術はロボット支援手術が導入され、進行がんには新しい薬剤が次々と導入されています。

泌尿器がんはどんな症状ですか?

腎がんは、進行すると血尿、上腹部や背部の痛み、上腹部に固まりが触れることがあります(図1)。

図1 腎がんの症状

最近では健康診断や他の疾患の精密検査中に、エコー検査やCTによって無症状のまま比較的小さな腫瘍で見つかることが多くなっています。

膀胱がんは、目で見て分かる血尿、尿検査での血尿、頻尿(ひんにょう)などの排尿症状で見つかります。

前立腺がんは特別な症状はなく、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)と同様に排尿困難や頻尿などの症状が現れます。

また前立腺がんは骨に転移することが多く、骨折や骨の痛みで見つかることもあります。

泌尿器がんの検査・診断方法は?

腎がんはエコー検査、CTで診断します(図2)。腎がんにはさまざまな病理組織の種類があり、造影剤を用いたCTによりある程度、病理組織の種類を推測することができます。 また腎がんは局所で進行すると腎静脈(じんじょうみゃく)や下大静脈に進展することがあり、造影CTやMRIで診断します。

図2 CT検査(腎がん)

膀胱がんはエコー検査で膀胱内の固まりとして診断できますが、膀胱鏡により膀胱内部を直接観察することで膀胱がんの大きさ、数、形状を把握します。がんがどのくらい深く広がっているかは、造影MRIで診断します。

前立腺がんは、特異的なPSAという腫瘍マーカーがあり、この値が高ければ高いほど、前立腺がんの可能性が高くなります。

造影MRIで前立腺がんの可能性を診断し、最終的には前立腺に12~15本程度、針を刺して組織を採取し、顕微鏡で診断します。

泌尿器がんの治療方法は?

腎がんは、大きさが比較的小さく、腎臓にとどまっている場合、がんとその周囲の正常部分を切除する腎部分切除術を行います。がんが大きい場合には腎臓全体を摘出します。

腎部分切除術は、切除や切除した部位の縫い合わせがより精密にでき、合併症が少ないロボット支援手術が増えています。

また腎臓全体を摘出する手術も腫瘍の状況に応じて、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術、ロボット支援手術、開腹手術を行っています。

腎がんが進行している場合には、がん細胞を攻撃する自分の免疫細胞を元気にする免疫チェックポイント阻害薬と、腫瘍が自ら大きくなるために血管を新しく作るのを促す「VEGF」という分子を抑える分子標的治療薬(ぶんしひょうてきちりょうやく)を組み合わせたり、順次投与していきます。

膀胱がんは、まずは尿道から内視鏡を挿入し、膀胱の中で、どのくらい腫瘍が深く入っているか診断と治療を兼ねて、腫瘍を切除します。

がんが表在性(表面の粘膜や粘膜下にとどまっている状態)の場合は、再発の予防に膀胱内に抗がん剤やBCGを注入します。がんが深く筋層まで進展すると膀胱を全部摘出して、腸管などを用いて、尿の道筋を変える尿路変向術(にょうろへんこうじゅつ)が必要になります。

当科では、膀胱全摘除術と尿路変向術も体の負担の少ないロボット支援手術を行っています。 

前立腺がんは前立腺に限定している場合、根治をめざす治療には、手術、放射線の出る小線源を埋め込む治療(小線源療法(しょうせんげんりょうほう))(図3)、体の外から放射線を当てる外照射療法(がいしょうしゃりょうほう)、特殊な放射線の粒子線治療(りゅうしせんちりょう)があります。

図3 小線源療法

粒子線治療以外は、すべて当院で行っています。前立腺がんが進行すると男性ホルモンを抑える治療を中心に新しい薬剤が導入され、抗がん剤を含めてこれらの薬物治療を適切に行っています。

泌尿器がんの予防方法は?

予防できる具体的な方法はありませんが、腎がんでは、肥満、喫煙、高血圧、肉や乳製品の過剰摂取がリスク因子です。

膀胱がんでは喫煙、職業性発がん物質へのばく露、前立腺がんでは欧米型の食事パターン、肥満、カルシウムの過剰摂取、喫煙が、がん発生のリスク因子になっているため気をつけてください。

執筆者

泌尿器科 副診療科長・准教授 高橋 正幸

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

泌尿器科の特徴

診療科長・教授 古川 順也

※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

特色

当科では、腎がん、前立腺がん、膀胱がんなどの泌尿器がんに対し、手術、放射線治療、薬物療法について最新の治療を提供しています。

ロボット支援手術、前立腺がんに対する小線源療法はそれぞれ1,000例を超え、豊富な経験があります。その他、腎移植、小児泌尿器疾患、女性泌尿器疾患、男性不妊や性機能障害など幅広い分野を網羅しています。

主な対象疾患

腎がん、腎盂尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、陰茎がん、精巣腫瘍、副腎がんなどの悪性腫瘍やさまざまな副腎良性腫瘍、前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿路結石、慢性腎不全、小児泌尿器疾患、女性泌尿器疾患、男性不妊、男性性機能障害など

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