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消化器・移植外科

Q12:高度肥満症・糖尿病に対する手術

この記事の内容

高度肥満症とは?

肥満になると糖尿病、高血圧、脂質異常などの生活習慣病のリスクが高くなりますが、肥満の指標としてBMIがあります。BMIは〈体重kg÷身長m÷身長m〉で算出され、一般的にBMI25以上を肥満、35を超えると高度肥満とされています。

高度肥満を伴っている糖尿病の方は、食事療法や運動療法、飲み薬やインスリン注射などの内科的治療では改善しにくいため、最近では手術によって肥満、糖尿病を治療する方法が注目されています。

高度肥満症はどんな症状ですか?

肥満の方は、身体活動が低下している場合が多く、日常生活の動作に広く影響がみられます。

さらに高度の肥満では、歩行、立ち座りなどの日常生活動作の制限のほか、車のシートベルトが締められない、肘(ひじ)掛けいすに座れない、排泄後に自分のお尻が拭けない、自分で背中を洗えないなど、さまざまな生活上の制約を受け、その影響は生活の質に大きく及びます。

また高度肥満症の方は、睡眠呼吸障害の発生に注意が必要です。自覚症状としては、睡眠時の窒息感や日中の眠気、朝の頭痛などもありますが、通常は周囲の人からのいびきの指摘や睡眠時の無呼吸から発見されます。

ほかにも2型糖尿病や脂肪肝、脂質異常症、高血圧、心筋梗塞(しんきんこうそく)・狭心症、腎臓病、脳梗塞などの肥満に関連する健康障害を合併するようになります。

高度肥満症の検査・診断方法は?

BMIが35kg/㎡以上を「高度肥満」と定義し、同じBMI 35kg/㎡以上でも肥満に関連する健康障害を伴うか、それが予測されて医学的に減量を必要とする場合「高度肥満症」とします。

またはウエスト周囲長の測定によるスクリーニングで内臓脂肪の蓄積を疑われ、腹部CT検査などによって確定診断される内臓脂肪型肥満の場合も、高度肥満症と診断します。

高度肥満症の治療方法は?

肥満症では、肥満が原因でさまざまな健康障害が生じ、放っておくと最後には生命を奪いかねない多くの病気を引き起こします。

肥満症の治療の基本は、減量です。肥満症に含まれる合併症は体重減少により改善できるので、個人に合わせた減量目標を設定し治療を行います。

肥満症の治療は大きく分けて 1.食事療法、2.運動療法、3.認知行動療法、4.薬物療法、5.外科治療の5つがあります。

高度肥満を伴っている方の糖尿病は、食事療法や運動療法、一般的な飲み薬やインスリン注射などの内科的治療では改善しにくいことが知られていて、最近、手術によって肥満、糖尿病を治療する方法が注目されています。

現在、わが国で行われている高度肥満症に対する手術の約90%は腹腔鏡(ふくくうきょう)下スリーブ状胃切除術という方法です。これは、胃の外側の部分を約80%程度切り取ってバナナのように細くし、胃の容量を小さくする手術です(図)。さらにこの手術は腹腔鏡で行っており、開腹手術と比べてかなり小さな傷で行うことができます。

図 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を示した図

術後は胃の容量が小さくなり、食事が少しずつしかとれなくなるので摂取エネルギーが減り、結果的に体重が減少します。また手術の後、それまで使っていた糖尿病内服薬やインスリン注射が少なくなったり、不要になったりすることが数多く報告されています。

肥満の予防方法は?

食生活や運動習慣など、肥満になりやすい生活習慣を見直すことで予防は可能です。

具体的には、夜間に食べ過ぎないようにする、1日3食、規則正しく食べる、ゆっくりよくかんで食事に時間をかける、栄養の偏りなくバランス良く食べる、アルコールは適量にする、普段から軽めの運動を習慣的に行うようにする、などです。

執筆者

消化器・移植外科 病棟医長・特任准教授 柏原 秀也

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

消化器・移植外科の特徴

病棟医長・特任准教授 柏原 秀也

※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

特色

当科は中国・四国地方でいち早く減量・代謝改善手術を開始し、20人の高度肥満・糖尿病患者に対して腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を行ってきました。これまで手術後の出血などの重篤な合併症を認めておらず、安全に施行できています。最近では香川や高知などの県外から高度肥満で悩んでいる方の紹介もあります。

主な対象疾患

当科では、以下の条件を満たす方に、腹腔鏡下スリープ状胃切除術を施行しています。

1.  BMI35以上の場合
6か月の内科的治療を行っても十分な効果が得られない。
糖尿病、高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群または非アルコール性脂肪肝炎を含めた非アルコール性脂肪肝疾患のうち1つ以上を合併

2.  BMI32~34.9の場合
6か月の内科的治療を行っても十分な効果が得られない。
糖尿病でHbA1c 8.0以上(NGSPの値)、高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、非アルコール性脂肪肝炎を含めた非アルコール性脂肪肝疾患のうち2つ以上を合併

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