最近の眼科治療は?
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)は失明する可能性がある病気で、近年患者数が増加しています。抗(こう)VEGF薬硝子体注射(やくしょうしたいちゅうしゃ)や光線力学療法(こうせんりきがくりょうほう)の登場によって、病気の進行を抑え視力の改善が期待できるようになりました。
緑内障で一度障害された視神経は回復しません。当科では新しい作用の点眼薬や目の負担の少ない緑内障手術を取り入れ、病型に適した治療を行います。斜視(しゃし)は両目の視線のずれのため二重に見えることがあり、小児から高齢者まで困り具合に応じて手術や眼鏡、注射の治療を行っています。
加齢黄斑変性の症状や治療法は?
加齢黄斑変性は網膜の中心の部分である黄斑部(おうはんぶ)に異常な新生血管が伸びて網膜内に液体や出血がたまり、視細胞が傷んで見えにくくなる難治性の病気です。治療法として抗VEGF薬硝子体注射と光線力学療法(PDT)があります。
抗VEGF薬は異常な血管や網膜の腫れを減らし、病気の進行を抑える働きがあります(図1)。
以前は失明するのを待つだけの病気でしたが、この薬の登場で患者さんが視力を維持することが可能となりつつあります。
繰り返し目の中に注射を行う必要があることが多いため、より効き目が長持ちする新しい抗VEGF薬の開発も積極的に行われています。当科では、新しい薬剤の治験に参加しその効果を検証しています。
また、脳梗塞(のうこうそく)になったことがあるなどで抗VEGF薬を使いにくい患者さんには、光線力学療法(PDT)を行います。光線力学療法は特殊な薬剤を注射した後、弱いレーザーを照射することで病変部の異常血管のみを選択的に閉塞(へいそく)させる特殊な治療です。
このように加齢黄斑変性の患者さんには、目や全身の状態に応じて、薬剤や治療法の選択を行っています。
緑内障の手術治療法は?
緑内障では、目の神経(視神経)が傷んで視野が狭くなります(図2)。日本人では40歳以上の17人に1人が緑内障であり、成人の失明原因の第1位です。点眼治療で眼圧を下げていくことで緑内障の進行を遅らせますが、進行が早い方に対しては、手術治療を選択することがあります。
当院で行っている緑内障治療としては線維柱帯(せんいちゅうたい)切開術(せっかいじゅつ)(眼外法/眼内法)、線維柱帯切除術、緑内障インプラント挿入術、隅角癒着解離術(ぐうかくゆちゃくかいりじゅつ)などがあります。
近年、MIGS(ミグス)(低侵襲緑内障手術)が注目を集めており、当院でもマイクロフック(手術に使う小さな器具)を使用した線維柱帯切開術を行っています。小さな創口(きずぐちのこと)で行う緑内障手術で目への負担が少なく、短時間で可能なため多くのメリットをもたらします。
2回目以降の手術や難治性緑内障の場合には、緑内障インプラント挿入術を行っています。眼内に挿入したチューブを通して眼の外に房水(ぼうすい)(目の中を栄養する水)を流出させることで眼圧を下げることができます。基準を満たした施設でのみ治療することができ、当院は認定施設となっています。
このように緑内障で悩む患者さんの負担を軽減できるよう、緑内障の病型、生活背景を考慮し、それぞれに適した治療をおすすめしています。
左右の視線がずれる斜視の症状や治療方法
左右の視線は通常、同じ方向を向いていますが、何らかの原因で異なる方向を向いていることを斜視といいます。
斜視になると1つのものが2つに見えます。例えば車道のセンターラインが2本に見えたり、テレビの文字が2つに見えたりします。ただし、幼少のころから斜視の場合は、片目で見る癖がつくので二重には見えません。
眼科では、目の位置や動きの検査を行います。必要に応じて採血や画像検査(CTやMRI)を行い、原因を調べて治療を行います。
原因はケガ、目の周りの炎症、脳の病気などで、原因が不明の場合も多いです。治療は、①目の周りの筋肉を手術で移動させる方法、②ボツリヌス毒素を注射する方法、③眼鏡にプリズムレンズを入れる方法などがあります。
二重に見えていなくても、見た目が気になる、目が疲れるなどの斜視の症状がある場合は、希望に応じて治療を行います。
眼科の特徴
診療科長・教授 三田村 佳典
※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。
特色
8種類の病気別の専門外来が設置されており、病気に詳しい専門の医師が診断、治療を行っています。特に、網膜疾患を得意としています。
2022年の手術件数は1,512件で、そのうち線維柱帯切開術(眼外法/眼内法)60件、線維柱帯切除術115件、緑内障治療用インプラント挿入術27件、斜視手術69件、光線力学的療法23件でした。抗VEGF注射は900件と多数行っています。
主な対象疾患
網膜疾患、角膜、緑内障、ぶどう膜炎、小児眼科、斜視弱視、涙道・眼瞼(がんけん)・眼窩(がんか)疾患、視神経疾患、網膜色素変性、ロービジョンなど