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耳鼻咽喉科・頭頸部外科

Q15: 慢性副鼻腔炎のトータルマネジメント

この記事の内容

慢性副鼻腔炎とは?

慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)とは、額や目の間、頬部など顔面の骨の中の空洞に炎症が生じ粘膜が腫れて、頭や顔面の鈍い痛み、鼻づまり、粘り気のある鼻汁、痰(たん)、匂いが分からなくなるなどの症状が現れる病気です。

炎症の原因として、細菌、ウイルス、カビの感染や歯の炎症、好酸球性炎症(こうさんきゅうせいえんしょう)などがあります。薬物療法や鼻の洗浄、局所処置などを行いますが、改善しなかった場合は手術治療を行います。手術後に再発した場合には生物学的製剤の投与を行います。

慢性副鼻腔炎はどんな症状ですか?

慢性副鼻腔炎の症状は、頭や顔面の重たい感じと鈍い痛み、鼻づまり、粘り気のある鼻水、喉(のど)に流れてくる鼻水(後鼻漏(こうびろう))、咳(せき)、痰(たん)、匂いが分からなくなる(嗅覚障害)などがあります。現在日本の約200万人の方が慢性副鼻腔炎になっているとされています。

従来は細菌感染による好中球(こうちゅうきゅう)(白血球の中の一種)の炎症が多く、マクロライド系抗菌薬による薬物療法や手術治療により治る方がほとんどでした。

近年は中年の方を中心に嗅覚(きゅうかく)障害から始まり、より粘り気の強いにかわ状鼻水と後鼻漏、両側に多発する鼻茸(はなたけ)(鼻ポリープ)と鼻づまりを引き起こす難治性の好酸球性副鼻腔炎が増えています。

慢性副鼻腔炎の検査・診断方法は?

慢性副鼻腔炎の検査・診断方法は、まず内視鏡検査にて鼻の中の鼻水や後鼻漏の量や性状、鼻茸のある場所や数、大きさを確認します。また匂いの検査も行います。

さらにCTで副鼻腔炎の病気の広がりを検査し、副鼻腔炎だけでなく腫瘍(しゅよう)も疑われる場合にはМRI検査も行います。

そして好酸球性副鼻腔炎の診断のために、血液中の好酸球の数や合併することの多い(関連して起こりやすい)気管支喘息(ぜんそく)、好酸球性中耳炎(ちゅうじえん)があるかどうかを検査します。好酸球性副鼻腔炎の診断を確定するには、鼻茸の一部を切除する組織検査が必要になります。

慢性副鼻腔炎の治療方法は?

従来の慢性副鼻腔炎に対する治療では、マクロライド系抗菌薬を中心とした薬物療法や鼻洗浄、局所処置、ネブライザー治療などを行うことで多くの方が良くなります。

薬物療法で治らなかった場合は、内視鏡下鼻副鼻腔手術を行います。当院は4K内視鏡と手術ナビゲーションシステムを導入しています。4K内視鏡は細部まで詳細に描写することができるため、より繊細な手術を行うことができます(「内視鏡・外視鏡・低侵襲手術」参照)。

また手術ナビゲーションシステムは手術前に撮影したCT画面上に1mm程度の誤差で手術の操作部位をリアルタイムに表示することができるため、目や脳などの危険部位を確認しながら安全、確実に手術を行うことができます(写真、図1)。

写真 内視鏡下鼻副鼻腔手術の様子
図1 手術前(左)と手術後(右)のCT画像

気管支喘息を合併している重症の好酸球性副鼻腔炎の患者さんでは、残念ながら手術治療後に鼻茸が再発する方がいます。その場合は2020年から保険適用となった生物学的製剤デュピルマブを投与します。

デュピルマブは嗅覚に対する効果が高く、多くの患者さんが投与数日後には匂いが回復し始め、鼻茸が小さくなって鼻水、鼻づまりも改善します(図2)。

また、好酸球性副鼻腔炎に合併した好酸球性中耳炎や気管支喘息の病状もよくなる人が多くいます。

図2 デュピルマブ投与前の鼻茸と投与後

(左写真)デュピルマブ投与前は大きな鼻茸の再発を認めるが、(右写真)デュピルマブ投与後は鼻茸が消失し、鼻の通りが良くなって奥まできれいに観察できるようになっている。

慢性副鼻腔炎の予防方法は?

重症の好酸球性副鼻腔炎の方は鼻茸や膠状鼻水、嗅覚障害が再発しやすいため、手術後も毎日、鼻噴霧用ステロイド薬を点鼻します。

鼻洗浄もできれば複数回行っていただくことで、手術で改善された鼻副鼻腔の炎症がコントロールされていき、鼻茸の再発を予防することができます。

執筆者

耳鼻咽喉科・頭頸部外科 診療科長•教授 北村 嘉章

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科の特徴

診療科長・教授 北村 嘉章

※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

特色

当科は、首から上の脳と目を除くすべての領域を担当し、内科的な診断、治療から手術治療、そしてリハビリテーションまで一貫した診療を行います。

この領域には人生を豊かにするために必要な聴覚、平衡覚、味覚、嗅覚などの感覚器と摂食嚥下(えん げ)、音声言語、顔面表情筋などの運動器が集中しているため、治療による機能の改善と生活の質が向上する喜びを患者さん自身に実感していただける治療がたくさんあります。当院ではロボット手術、内・外視鏡手術、人工内耳埋込術、光免疫療法、耳管ピン手術、がんゲノム医療などの最新治療を行っています。

主な対象疾患

難聴(先天性から加齢性まで)、中耳炎、めまい平衡障害、顔面神経麻痺(まひ)、アレルギー性鼻炎、咽喉頭炎(いんこうとうえん)、音声言語障害、嚥下障害(えんげしょうがい)、唾液腺腫瘍、頭頸部がんなど

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