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皮膚科

Q17:アトピー性皮膚炎と円形脱毛症の最新治療

この記事の内容

アトピー性皮膚炎と円形脱毛症とは?

アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返すかゆい湿疹で、気管支喘息(ぜんそく)、アレルギー性鼻炎・結膜炎など、アレルギー性の病気になりやすい体質にいろいろな環境要因が加わり生じます。

円形脱毛症は頭髪が円形に抜ける病気で、脱毛部は1個、数個、多発などさまざまで、すべての頭髪や体毛まで抜けることもあります。この2つは合併しやすく類似点があり、共通薬を含めてよく効く新薬が続々と登場し、新しい時代が到来しました。

アトピー性皮膚炎はどんな症状ですか?

乳児期によくみられる顔の赤い湿疹が体にまで広がります。

皮膚がかさかさと乾燥し、成長につれて首、肘(ひじ)の内側、膝(ひざ)の裏側にかゆい湿疹が出ます。

思春期から大人になると、皮膚は全体に乾燥し、体の所々に湿疹ができ(写真1)、良くなったり悪くなったりを繰り返します。

写真1 アトピー性皮膚炎

小児期に湿疹が治る人もいますが、一度治っていても思春期頃から再発する人、大人になってから湿疹が出て高齢まで症状が続く人もいます。

年齢分布では乳幼児と20歳前半に2つピークがあります。この皮膚炎の特徴は、皮膚の過敏、炎症、かゆみの3つです。

アトピー性皮膚炎の治療方法は?

皮膚の過敏に対しては、皮膚の保湿・保護が重要で、毎日入浴後に保湿薬を塗ります。炎症とかゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬を内服し、年齢や湿疹の場所に応じた強さのステロイド薬を外用します。

外用薬では免疫抑制薬プロトピック軟膏®、JAK阻害薬コレクチム軟膏®、PDE4阻害薬モイゼルト軟膏®も使えます。炎症が収まった後も、回数を減らして抗炎症薬の塗布を継続することで、良い状態を保つことができます。

中等症以上の患者さんに紫外線照射や免疫抑制薬シクロスポリンの内服に加え、2018年以降、新薬が続々と登場しました。

注射薬として、3つの特徴にかかわるIL-4とIL-13両方を抑えるデュピクセント®(2023年9月から生後6か月以上)、かゆみにかかわるIL-31を抑えるミチーガ®(13歳以上)、IL-13を抑えるアドトラーザ®(2023年9月から15歳以上)が使えます。

内服薬として、IL-4、IL-13 、IL-31を含めた経路を抑えるJAK阻害薬であるオルミネント®(15歳以上)、リンヴォック®・サイバインコ®(12歳以上)の3つも使えます。

新薬は優れた効果が期待でき、患者さん個々に合う治療法を選択し、健やかな日常生活を送ることができる時代になりました。

円形脱毛症はどんな症状ですか?

頭髪が主に円形に抜けます(写真2)。脱毛部は1個とは限らず、程度が強くなれば多発し、すべての頭髪が抜けることもあります。

写真2 円形脱毛症

さらにまゆげ、まつげ、体毛まで抜けることもあります。アトピー性皮膚炎と同じようなアレルギー性の病気になりやすい体質に、疲労、精神的ストレス、感染など何らかの環境因子が加わって生じますが、誘因が不明のことが多いのが現状です。

毛は毛の根元にある毛球(もうきゅう)部の毛母細胞(もうぼさいぼう)により作られますが、患者さん自身のリンパ球が変調をきたし、自身の毛球部を攻撃してしまい、ダメージを受けた毛が抜けます。

円形脱毛症の治療方法は?

脱毛部が小さく少数なら、自然に治ることも期待できます。脱毛部の周囲の毛を軽く触ることで抜ける毛の数を確認し、今後の脱毛の進行を予測することができます。

治療の基本はステロイド薬の使用で、1日1~2回脱毛部と周囲の頭皮に塗ります。早期に広範囲に脱毛する場合、2泊3日の入院でステロイド薬を点滴するステロイドハーフパルス療法(15歳以上)が効果的です。退院後、経過観察のみで半年後には完治が期待できます。

ほかに、局所免疫療法や紫外線療法(エキシマライト)も効果的です。

治りにくい患者さんに対する内服薬として、前述のJAK阻害薬オルミネント®(2022年6月から15歳以上)やJAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬リットフーロ®(2023年9月から12歳以上)が使えるようになりました。優れた発毛効果を期待できる時代になりました。

執筆者

皮膚科 診療科長・教授 久保 宜明

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

皮膚科の特徴

診療科長・教授 久保 宜明

※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

特色

乾癬(かんせん)外来、脱毛外来、男性型脱毛症(AGA)の専門外来を設け、徳島県の基幹病院として、急性・難治性皮膚疾患全般の診療にあたっています。アトピー性皮膚炎における注射・内服薬使用例、円形脱毛症におけるステロイドハーフパルス療法・内服薬使用例に加え、尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)や乾癬性関節炎に対する注射・内服薬使用例も非常に多く、徳島県内のみならず近隣県から多くの患者さんが訪れています。

主な対象疾患

乾癬、アトピー性皮膚炎、痒疹、脱毛症、薬疹、感染症、皮膚腫瘍、水疱(すいほう)症など

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