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精神科神経科

Q21:うつ病の新しい治療法〜反復経頭蓋磁気刺激療法

この記事の内容

うつ病とは?

うつ病は、気分の落ち込みや興味の喪失、疲労感などの症状が持続する精神疾患です。日常生活に支障をきたすことが多く、原因は、遺伝子、脳内の神経伝達物質のバランスの変化、ストレスなど多くのものがあげられます。近年、社会的な問題としても注目されており、正しい理解と適切な治療が求められています。

うつ病の症状は多岐にわたり、軽度から重度までさまざまな程度で現れます。症状が継続する場合は、専門家の診断と治療が必要になります。

うつ病はどんな症状ですか?

うつ病の症状は多岐にわたり、その現れ方は人それぞれ異なります。以下は、主な症状の一部です。

1.気分の落ち込み=憂鬱(ゆううつ)な気分や喪失感が続いて、日常の楽しみや喜びを感じることが難しくなります。

2.興味・喜びの喪失=以前は楽しんでいた趣味や活動に対する興味が失われ、何をするにも意欲が湧かない状態となります。

3.無気力=体が重く感じる、何もする気が起きないといった状態が続きます。

4.睡眠障害=寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうなど、質の良い睡眠を取ることができない状態が続きます。

5.食欲不振または過食=食事に対する興味が失われることや、逆に食べ過ぎることがあります。

6.集中力の低下=仕事や学業、日課に集中できなくなり、物忘れが増えることもあります。

7.自己評価の低下=自分に対する評価が低くなり、自分を過小評価する傾向が強まります。

8.将来に対する悲観的な考え=未来に対する希望が持てず、悲観的な考えが頭をよぎることが増えます。

これらの症状は、軽度から重度までさまざまな程度で現れ、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。症状が継続する場合、専門家の診断と治療が必要となります。

うつ病の検査・診断方法は?

うつ病の診断は、主に医師との面談により行われます。症状の持続期間や重症度、日常生活への影響などを詳しく聞き取ることで、診断が下されます。

必要に応じて、血液検査や脳の画像検査も行われることがあります。

うつ病の治療方法は?

薬物療法=うつ病の治療の主軸となるのが薬物療法です。

抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、うつ病の症状を和らげます。使用される薬は患者さんの症状や体質によって異なり、医師の指示に従って適切な量と期間を守りながら服用することが重要です。

心理療法=心理療法は、専門家との対話を通じて、患者の考え方や感じ方を理解し、それを改善するための方法を探る治療法です。

認知行動療法や対人関係療法など、さまざまなアプローチがあり、患者さんの状態やニーズに合わせて選択されます。

刺激療法=難治性うつ病の患者さんに対して、新たな治療法として経頭蓋磁気刺激療法(けいとうがいじきしげきりょうほう)(Transcranial Magnetic Stimulation: TMS)が注目されています。

この治療法は、磁気を用いて脳の特定の部位を刺激することで、症状の改善をめざします(図、写真1、写真2)。特に、薬物療法や心理療法に反応しない患者さんに対して有効とされています。

図 経頭蓋磁気刺激療法の仕組み
写真1 前頭部にコイルを当てて刺激をします
写真2 刺激中は楽な姿勢で受けることができます

経頭蓋磁気刺激療法とは?

経頭蓋磁気刺激療法(TMS)は、難治性うつ病の治療法として近年注目されている、体への負担が少ない治療です。

この治療法は、強力な磁気を用いて脳の特定の部位を刺激し、神経細胞の活動を調節することで、うつ病の症状の改善をめざします。

TMSの最大の特徴は、手術や麻酔なしで行える点です。治療中は、患者さんは目を覚まして座ったままで、特別な痛みや不快感はほとんどありません。治療は1回40分ほどで終わりますが、6週間にわたり連日行いますので、当院では入院して受けていただいています。

TMSは、特に薬物療法や心理療法に反応しない難治性うつ病の患者さんに対して有効とされています。多くの臨床試験で、TMS治療後に症状の改善が見られることが報告されており、安全性も高いと認識されています。

しかし、すべての患者さんに効果があるわけではありません。治療を受ける前に、専門医と十分な相談を行い、適切な治療法を選択することが大切です。

執筆者

精神科神経科 副診療科長・准教授 中瀧 理仁

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

精神科神経科の特徴

診療科長・教授 沼田 周助

※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

特色

うつ病の初期から難治例まで、多くの症例を診療しています。例年、外来新規患者の約100名、入院患者の約100名がうつ病を含む気分障害の患者です。

抗うつ薬の効果が乏しい難治例には、電気痙攣(けいれん)療法(徳島県内で最多の患者で施行)や反復経頭蓋磁気刺激療法を用いて治療し、できるだけ早くもとの生活に戻れるよう全力を尽くしています。退院後は作業療法やデイケアを利用できます。

主な対象疾患

経頭蓋磁気刺激療法は以下の項目に合致する18歳以上の方が対象となります。

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