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心身症科

Q22:摂食障害(神経性やせ症、神経性過食症)の治療

この記事の内容

摂食障害とは?

摂食障害(せっしょくしょがい)は、食事のコントロールができなくなる精神疾患です。思春期以降の女性に多く見られ、痩(や)せを伴う場合もそうでない場合も、体や気持ちへ深刻な影響を与えます。

自分の力で食事のコントロールを取り戻すのは難しいため、精神科での外来通院や入院治療が必要になることがあります。治療には心理療法が用いられますが、体の状態が悪い場合には栄養状態の改善の方が優先されます。

摂食障害はどんな症状ですか?

摂食障害は食事が自分でコントロールできなくなる病気です。

いくつかのパターンに分けられ、痩せを伴う神経性やせ症(拒食症)、過食嘔吐を伴う神経性過食症などがあります。

日本は世界的に見ても有病率の高い国で、とりわけ思春期の女性に発症しやすいことが知られています。

日本の高校生から大学生の女子学生を対象に調査した研究では、100人のうち0.5人が神経性やせ症、2人が神経性過食症であったという報告があります。

神経性やせ症は多くの場合、何げないダイエットから始まります。ほとんどの人はダイエットをしても摂食障害にはなりません。

一部の人は、明らかに痩せているにもかかわらず、自分の体形を太っていると思い込むようになり、さらなるダイエットに励もうとします。やがて、長期に栄養失調の状態が続くと、内臓を動かすエネルギーも枯渇してしまい、衰弱や不整脈などを引き起こします。

神経性過食症の場合、痩せは伴いませんが、食べたものを吐いたり無理やり出したりするため、電解質の異常をきたします。

どちらも、自己評価が体重の数値によって左右され、気持ちが不安定になりやすいという特徴があります。

摂食障害の方の致死率は非常に高いといわれています。しかし、患者さん本人は「自分は病気だから、治療が必要だ」という意識を持ちにくく、体重増加への恐怖から医療機関にかかることに強い抵抗を示す人も少なくありません。ですが、問題が長期化するほど摂食障害の思考から抜け出すことが難しくなりますので、できる限り早期に治療を受けることが望ましいです(図)。

図 摂食障害のパターンの一例

摂食障害の検査・診断方法は?

まずは血液検査などの身体的な検査を行います。食事がとれない原因が身体的な病気ではないことを確認した後に、医師が面談で次のような症状を確認して診断します。

●神経性やせ症

①必要量と比べてカロリーを極端に制限した生活をしており、低体重である(おおむねBMI 17以下)
②体重が低いにもかかわらず、体重増加を極端に怖がる。
③自己評価が体重の数値に左右される。

※神経性やせ症は、食事をとにかくとらない「制限型」と、体重を減らすための行動(自己誘発嘔吐、下剤・利尿薬の乱用、過剰な運動)を伴う「過食嘔吐型」に分かれます。

●神経性過食症

①大量の食事をとることが自分では止められない。
②体重を減らすための行動(自己誘発嘔吐、下剤・利尿薬の乱用、過剰な運動)がある。
③自己評価が体重の数値に左右される。

最初は神経性やせ症・制限型だったのが、ある時を境に神経性やせ症・過食嘔吐型や神経性過食症に移行するなど、診断が時期によって変化することがあります。

摂食障害の治療方法は?

治療については精神科で心理療法、栄養療法、疾患教育を実施するのが一般的です。

心理療法は、専門家との対話を通じて、患者の考え方や感じ方を理解し、それを改善するための方法を探る治療法です。抗うつ薬などによる薬物療法も必要に応じて行いますが、心理療法の方が効果も長続きするといわれています。

当科では摂食障害の教育入院も行っています。入院治療では、朝昼夕の3食を規則正しく食べる練習をしながら、テキストや医師との面談を通して回復のヒントを探っていきます。徳島大学病院栄養サポートチームによる栄養指導を受けることもできます。しかし、あまりにも低栄養の状態だと、思考力が低下しているため心理療法の効果が期待できません。身体的に危険な場合は、入院して点滴などを行い、栄養状態が改善してから心理療法を行います。

摂食障害の予防方法は?

地域の保健対策や学校教育などで、摂食障害について啓発する機会を持ってもらうことが大事だと考えられています。

ほかにも、正しいダイエット法を知ることや、SNSから距離をとることなども予防になると考えられます。

執筆者

心身症科 外来医長・講師 富岡 有紀子

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

心身症科の特徴

診療科長・教授 沼田 周助

※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

特色

摂食障害は2022年10月~2023年9月の1年間で、外来患者さん(新規)を30例、入院患者さんを40例受け入れました。外来通院以外にも、身体的な治療を濃厚に行う必要のない方を対象とした教育入院を実施しています。

重症例についても栄養部・看護部・身体科との連携を取れる総合病院の強みを生かし、徳島県内外からの紹介を多数受け入れています。

主な対象疾患

摂食障害、ストレス関連疾患、慢性疼痛、更年期障害、自律神経失調症など

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