不妊症とは?
不妊症とは、妊娠を望むカップルが一定期間避妊をしていないにもかかわらず、妊娠に至らないことをいいます。原因は多岐にわたり、男性側では精子の数や運動率の低下、女性側では排卵障害などがあげられます。
不妊症は不妊原因や年齢などに応じて治療法を選択しますが、治療を受ける女性の高齢化に伴い合併症が生じる場合も増えています。当科では妊娠のみを目的とするのではなく、安全に出産していただくための包括的な不妊治療を提供しています。
不妊症とはどんな症状ですか?
不妊症とは、妊娠を望むカップルが一定期間避妊をしていないにもかかわらず、妊娠に至らないことをいいます。この一定期間について、一般的には1年間とされています。
不妊症の原因は多岐にわたり、主なものとして男性側では精子の数や運動率の低下、女性側では排卵障害や卵管の通過性不良などが挙げられます。
最近では妊娠を望むカップルの高齢化に伴い、糖尿病や高血圧、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や子宮内膜症(ないまくしょう)などの合併症を持つ女性患者さんが増えています。
このような患者さんが妊娠した場合、妊娠中や分娩時のリスクが高まることが知られており、妊娠前からの十分な管理が求められます。
当科が心がけているのは、妊娠のみを目的とするのではなく、安全に出産していただくための包括的な医療を提供することです。
不妊症の検査・診断方法は?
不妊症を理由に受診されたカップルには、まずはじめに一連の検査を受けていただきます。
男性側では精子の状態や性交障害の有無、女性側では排卵障害や卵管通過障害の有無などを確認します。これにより不妊症の原因を特定したうえで、患者さんとの相談のもと治療方針を決定します。
一連の検査では妊娠に関連する要因だけでなく、婦人科合併症や内科合併症など妊娠予後(妊娠後の状態の見通し)を悪化させかねない要因の有無についても確認します。
不妊症の治療方法は?
不妊治療として、排卵の時期を特定して適切な時期での性交渉をすすめるタイミングの指導、調整した精液を子宮内に注入する人工授精、体外で一定期間培養した受精卵を子宮内に戻す体外受精・胚移植などがあげられます。
治療成績は加齢とともに低下するため、女性の年齢やカップルの希望を踏まえたうえで時期を逃さないよう治療計画を立てます。
不妊治療の実施に先立ち、婦人科合併症については手術、内科合併症については診療科間の連携のもと十分なコントロールを行います。
なお、当院では婦人科合併症に対して腹腔鏡(ふくくうきょう)やロボット手術を用いた低侵襲手術(体に負担の少ない手術)を行っています。
不妊症の予防方法は?
不妊症を予防することは困難ですが、不妊治療の成績は年齢とともに低下するため、妊娠を望む場合は早めに医療機関を受診することがすすめられます。
また、何かしらの合併症をお持ちの方は、包括的な医療を提供できる医療機関を選択することが大切といえます。
肥満で月経異常を認める場合は、ダイエットや運動によって改善する可能性があります。
はじめから高い目標を設定するのではなく、まずは5%程度の体重減少をめざしましょう。これにより、50%の月経改善効果が得られる可能性があります。
肥満の状態で妊娠すると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高くなるため、母児の健康管理という点からも適正な体重の維持が重要となります。
これとは逆に、痩(や)せている場合も注意が必要です。痩せによってホルモンの分泌が低下し、月経周期が不規則になったり、月経が起こらなくなったりすることがあります。
また、痩せでは妊娠中の合併症のリスクが高く、生まれてくるお子さんの健康状態にも影響すると考えられています。安易に不妊治療に頼るのではなく、体重が十分回復してから妊娠を試みることが大切です。
妊娠後の体調変化に不安を感じたら?
合併症などお持ちの方は、不妊治療を行う前に周産期を専門とする医師と面談しておくことがすすめられます。妊娠中のリスクについてあらかじめ知っておくことで、体調管理へのモチベーションが向上し、急激な体調変化にもスムーズに対応できるようになります。また、妊娠前から面識のある医師が担当することで、病状に対する不安がより軽減するものと思われます。
産科婦人科の特徴
診療科長・教授 岩佐 武
※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。
特色
徳島大学は日本で3番目に体外受精を成功させるなど、古くから生殖医療に力を入れてきました。一連の不妊治療を提供しているほか、総合病院の特性を生かして婦人科手術や内科合併症にも積極的に対応しています。
また、特にリスクの高い患者さんに対して、妊娠後も総合周産期母子医療センターである当院で対応しています。
主な対象疾患
不妊症に合併する頻度の高い疾患として、糖尿病、高血圧、子宮筋腫、子宮内膜症などがあげられます。これらの合併症をお持ちの方は、現在妊娠を考えていなくても将来に向けての十分な管理が必要となります。当院の産科婦人科生殖医療部門で対応が可能です