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歯周病科

Q29:根尖性歯周炎と歯周病に対する正確かつ緻密な治療

この記事の内容

根尖性歯周炎と歯周病とは?

歯の周りに炎症が生じて、歯を支える骨が溶ける疾患には大きく2つあり、共に口の中の病原細菌の感染によるものです。1つは、むし歯で空いた穴から細菌が歯の中へ深く侵入して、神経や血管を主体とした組織や、根の先とその周囲にまで感染が及び炎症が生じる根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)です。もう1つは、歯と歯肉(歯ぐき)の間の隙間である歯周ポケット内で増えた細菌が、歯肉に感染して炎症が生じて進行した結果、歯を支える骨(歯槽骨(しそうこつ))が溶ける歯周病です。

根尖性歯周炎と歯周病はどんな症状ですか?

根尖性歯周炎では、歯肉が腫れ、痛みが生じ、進行すると根の先の骨が溶け、膿(うみ)がたまります(写真1)。

写真1 根尖性歯周炎

歯周病では、歯肉に炎症が生じて、歯ブラシでも歯肉から出血しやすくなり、歯肉が腫れて歯の周りに膿がたまります。進行すると、歯槽骨が溶けて、歯肉が下がり根の表面が露出し、歯が動いて、かんだときに痛みを生じます(写真2)。

写真2 レントゲンX線画像による歯の周囲の骨の状態の確認

放置すると歯が動いて、かみ合わせが不安定となり、口の中の機能や審美性に大きな影響が出ます。

根尖性歯周炎と歯周病の検査・診断方法は?

痛みや歯肉の腫れ・出血・膿のたまり具合、歯周ポケットの深さ、歯の動く程度、かみ合わせ、歯の外観を注意深く調べ、さらにX線写真による診査や歯みがき状態、歯石(しせき)の量、細菌感染状態の診査(PCR検査)を行います。

また、歯の中や周りの構造は複雑であるため、立体的に把握できる歯科用CT撮影を行う場合もあります(写真3)。さらに、歯科用顕微鏡を用いて、根の中の深い部分や歯の周りの状況をより詳細に観察します。

写真3 歯科用CT画像による根の中の構造の確認

根尖性歯周炎と歯周病の治療方法は?

根尖性歯周炎の治療の目的は、「根の中の細菌の除去」と「再感染を防ぐ緊密な封鎖」です。

治療が困難となり、痛み・腫れや膿が止まらないなどの症状が続く難治性の病変に対しては、歯肉を切開して根の先端を露出させた後、根の周りを清掃して、さらに根の先端を3mmほど切除し、その切断面を封鎖する外科的治療が行われます(写真4)。

写真4 根尖性歯周炎に対する外科的治療

歯周病治療の主体は、細菌の固まりである歯垢(しこう)や歯石を除去し、細菌がたまりにくく清掃しやすい環境を整える処置です。かみ合わせの調整や動いている歯の固定も行います。場合により歯肉を切開して、歯周ポケットの奥深く見えづらい部分にある歯石を除去する「フラップ手術」も行われます。

また、歯周組織を構成する細胞を活性化させる「成長因子」や骨補填材(こつほてんざい)を用いた歯周組織再生療法(ししゅうそしきさいせいりょうほう)を行うこともあります。

ただし、重度に進行した歯周病や全身状態などによっては、すべての症例において適応・有効であるとは限りませんので、詳細は担当医にご相談ください。

根尖性歯周炎と歯周病の予防方法は?

根尖性歯周炎と歯周病は、細菌感染症ですので、ブラッシングなどで口の中を清潔な状態に維持することが一番の予防法です。

しかし、疾患の初期では痛みなどの自覚症状をほとんど伴いませんので、定期的に歯科医院に通院し、検査や清掃を受けることが重要です。

また、口の中の細菌感染が、糖尿病や動脈硬化・肺炎・早産といったさまざまな全身疾患と関連することが知られています。従って、体の抵抗力なども疾患の発症、進行や治療効果に影響を及ぼしますので、リスクとなる全身疾患や栄養、喫煙などに対する対策も必要となります。

執筆者

歯周病科 診療科長・教授 湯本 浩通

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

歯周病科の特徴

診療科長・教授 湯本 浩通

※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

特色

一般的な根尖性歯周炎に対する根管治療(歯内療法)に加えて、高周波治療(写真5)、レーザー治療、さらには外科的歯内療法を行っています。

写真5 高周波電流の根尖性歯周炎への応用

基本的な歯周病治療に加え、レーザー治療、歯周外科治療(フラップ手術)、歯周組織再生療法、歯肉移植術(露出した根の表面を歯肉や粘膜で覆う根面被覆術を含む)などの歯周形成手術を実地しています。

主な対象疾患

根尖性歯周炎、歯周病、象牙質知覚過敏症、歯髄炎など

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