メニュー
かみあわせ補綴科

Q31:歯や顎に影響を及ぼすブラキシズムに対する戦略的治療

この記事の内容

ブラキシズムとは?

ブラキシズムは、かみしめや歯ぎしりなどの口腔習癖(こうくうしゅうへき)で、覚醒時(かくせいじ)ブラキシズムと睡眠時ブラキシズムに分けられます。

覚醒時ブラキシズムの中には、強いかみしめだけでなく、上下の歯を持続的に弱い力で合わせている歯列(しれつ)接触癖(せっしょくへき)(TCH:Tooth Contacting Habit)も含まれます。睡眠中には健康な人でも歯ぎしりやかみしめを行っており、起きているときの最大のかみしめ力(体重と同程度)を超えることがあります。

ブラキシズムはどんな症状ですか?

ブラキシズムは、健康な人にも認められるもので、重いものを持つときやストレスがかかっているときにかみしめたり、睡眠中にギリギリ歯ぎしりをしたりする口腔習癖(無意識に行っているお口の癖)です。 

この強い、あるいは弱くとも持続的にかむ力が歯や顎(あご)にかかることによって、歯の摩耗(まもう)や破折(はせつ)(写真1)、差し歯(クラウンやブリッジ)の破損や脱離、歯周病の悪化、歯槽骨(しそうこつ)の増生(増殖すること)、顎関節症(がくかんせつしょう)や緊張性の頭痛などを引き起こします。また、睡眠同伴者の睡眠を妨げる場合もあります。

写真1 ブラキシズムによる歯の摩耗や破折

ブラキシズムの検査・診断方法は?

次の症状から総合的に判断していきます。

著しい歯の摩耗が認められ、頬(ほお)やこめかみ辺りに存在している、かむときに使用する筋肉(咀嚼筋(そしゃくきん))の疲労や痛み、口の開けにくさが昼から夜にかけてあるのか、起床時にあるのかによって、覚醒時ブラキシズムか睡眠時ブラキシズムか、両者とも有するのかについて診断をしていきます。

診断が難しい場合には、ウェアラブル筋電計を用いて、日常生活における咀嚼筋の筋活動を測定し、確定診断していきます(写真2)。

写真2 ウェアラブル筋電計による診断

ブラキシズムの治療方法は?

ブラキシズムは原因不明のもの(原発性)と、何らかの疾患に伴って生じているもの(続発性)があります。

続発性の睡眠時ブラキシズムは、睡眠時無呼吸、逆流性食道炎、不眠症のような疾患が原因とされています。

問診やアンケートなどによって、そうした疾患があてはまる可能性がある場合には、専門外来に紹介をし、医科と歯科が連携して治療にあたります。

覚醒時ブラキシズムは、自分で意識的に止めることも可能ですので、カウンセリングによって日中のかみしめやTCH(歯列接触癖)を軽減していきます。

睡眠時ブラキシズムに対しては、歯ぎしりが減るように睡眠衛生指導(表)を行い、ブラキシズムによって破壊された口腔内を、見た目が良く、かめるように治療(写真3)で回復させた後に修復・補綴(ほてつ)、マウスピース(オクルーザルアプライアンス)を装着してもらうこともあります(写真4)。

表 睡眠時ブラキシズムに対する睡眠衛生指導
写真3 補綴歯科治療
写真4 マウスピース(オクルーザルアプライアンス)

ブラキシズムの予防方法は?

覚醒時ブラキシズムは、常に上下の歯が当たっていないか、顎に力が入っていないかを自分で認識することが第一歩です。そして、食事のとき以外はできる限りかみしめず、顎をリラックスさせるように心がけましょう。

また、昼間の食いしばりが減ると睡眠時ブラキシズムも軽減することもあります。

睡眠時ブラキシズムに関しては、睡眠自体を妨げるような行為、特に就寝前のカフェインやアルコール、ニコチン、大量の食品、刺激物の摂取、ブルーライト(テレビ、スマホなど)の視聴や激しい運動などは避けましょう。

執筆者

かみあわせ補綴科 外来医長・講師 鈴木 善貴

※執筆者の所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

かみあわせ補綴(ほてつ)科の特徴

診療科長・教授 松香 芳三

※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。

特色

歯や歯の一部が欠損した部分を差し歯や入れ歯、インプラントによって補い、見た目や咀嚼などの機能回復を行っています。口腔内スキャナーを用いた型どりや顎運動測定器(がくうんどうそくていき)を用いた顎の運動の診査など、最新のデジタル技術を取り入れた歯科治療も行っています。

また、ブラキシズム以外にも医科歯科連携によって、歯や顎の痛みの治療、歯科材料アレルギーの診査・診断および治療、閉塞性睡眠時無呼吸(へいそくせいすいみんじむこきゅう)の口腔内装置による治療も行っています。

主な対象疾患

う蝕(しょく)、歯の欠損、顎骨欠損、咬合異常、咀嚼障害、口腔顔面痛(顎関節症、非定型歯痛など)、ブラキシズム、閉塞性睡眠時無呼吸、歯科金属アレルギー、スポーツ外傷予防、木管楽器による咬傷(こうしょう)予防など

参考URL

この記事をシェアする
この記事の内容