歯科領域の特殊画像検査とは?
歯科領域の特殊画像検査には、歯科用CT、医科用CT、超音波検査、MRI検査などがあります。
歯科で診療する病気は歯・骨といった硬組織(こうそしき)と粘膜などの軟組織(なんそしき)の両方に及んでいる疾患が多くあります。例えば、歯ぐき(軟組織)にできた「がん」は進行すると顎(あご)の骨(硬組織)を破壊していきます。そのため歯科領域では病気に合わせてさまざまな検査方法を適切に選択または組み合わせて行います。
歯科用CT検査とは?
歯科用CTは、現在一部の疾患が公的医療保険に採用されていますので、保有している歯科医院が近年増加しています。
大学病院の歯科で扱う病気は一般歯科医院からの紹介が多く、その中には下顎(かがく)(下あご)に埋まっている親知らずが、下顎の中を通っている神経や血管と接している症例や、原因不明の歯痛の症例などがあります。
原因不明の歯痛の場合、一般歯科診療で行われているレントゲン撮影(口の中にフィルムを入れて撮影する方法)では、2次元(平面)的での画像しか撮影できません。そのため、原因が分からない場合が多く、歯科用CTのように3次元(立体)的に撮影すると、歯が折れていたりすること(図1)があります。
歯科領域では細かいところまで観察する必要があるため、一般のCT(医科用CT)と比較して細かく観察できる歯科用CTは、歯科領域での診断に有用な装置になっています。
一般CT検査とは?
歯科放射線科では歯科用CTだけでなく、一般歯科医院では保有していない「(医科用)CT」を使用して診断を行う病気もあります。
当科で扱う病気には、一般歯科医院では診断・治療が難しく、患者さんを大学病院に紹介されて画像診断を行うものが多くあります。
医科用CTは撮影可能な範囲が広いため、口の中(舌・顎(あご)など)にできたがんの範囲や転移の有無、顎の骨折などの検査・診断を行います。
がんの検査・診断を行う場合、造影剤を使用することがあります。がんが存在する部分は血流が豊富なため造影剤を血管に投与することで、画像にコントラストがつき、がんの位置・範囲や転移などを正確に診断することができます(図2)。
超音波検査とは?
一般歯科医院で診断・治療困難な疾患の中に、軟組織に生じる病気があり、軟組織の診断には超音波検査装置を使用する必要があります。
歯や顎の骨などの硬組織の疾患であれば、X線装置などである程度病変を知ることができますが、軟組織の診断に必要な超音波検査装置を保有している歯科医院はほぼありません。
超音波検査はがんのリンパ節(せつ)転移の有無をみるために使用されることが多く、患者さんが被ばくすることがないという利点がある反面、検査中に画像から診断するため術者の熟練した技術が必要になります。
МRI検査とは?
大学病院の歯科放射線科で扱う病気は、一般歯科医院でよく行われているむし歯治療から、口や顎にできたがんの治療までさまざまです。外から見て分かる病気もあれば、顎の中で大きくなっていく病気もあるので特定の予防方法はありません。
顎関節症(がくかんせつしょう)という疾患を聞かれたことがあると思いますが、同じ顎関節症でも硬組織(下顎や頭の骨など)が原因の場合もあれば、軟組織(骨と骨の間にあるクッションの役割を果たす)が原因の場合もあります。
硬組織が原因であればCT撮影を行い、顎関節の骨の変形が生じていないかの検査が必要で、軟組織が原因であればMRI検査(図3)が必要となります。
歯科領域での疾患に限りませんが、早期発見はその後の治療の成果を左右しますので、いつもより顎が左右対称でない、口内炎がいつもより治りが悪いなど、患者さん自身が気をつけていることが必要です。
そして、かかりつけの歯科医院を持ち、気軽に相談できる歯科医師や歯科医院に定期的に通院することも早期発見・早期治療につながります。
歯科放射線科の特徴
診療科長・准教授 細木 秀彦
※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。
特色
歯科放射線科は、身近に接している「街の歯医者さん」とは少し違い、X線撮影装置やCT撮影装置(医科用・歯科用)・MRI撮像装置・超音波検査装置といった専門的な装置を使用して、表面からは見えない歯や骨の中、口や顎周囲の粘膜の病気の有無や広がりを撮影して診断、治療へとつなげます。治療後もしっかりと治療できているか、再発していないかなど定期的に診断を行っています。
主な対象疾患
う蝕(しょく)、歯周病、口腔粘膜疾患、顎関節症、悪性腫瘍、良性腫瘍、歯の破折や顎の骨折など