小児の睡眠時無呼吸とは?
小児の睡眠時無呼吸は、睡眠中に気道の一部もしくは複数箇所がふさがってしまい、呼吸のための体の動きは認めるものの、鼻や口から空気の出入りがない無呼吸や、空気の量が半分程度の低呼吸となる疾患です。
健常な小児の2%に認められ、肥満が原因の成人とは異なり、アデノイドや口蓋扁桃(こうがいへんとう)(喉(のど)の奥の両側に一つずつあるリンパ組織)の肥大が原因と考えられてきましたが、上顎(じょうがく)の横幅が狭いことや下顎(かがく)が小さいことなどの歯科的な問題が原因となるといわれています(図1)。
小児の睡眠時無呼吸はどんな症状ですか?
小児の睡眠時無呼吸の症状は、睡眠中の無呼吸、低呼吸が認められるだけでなく、胸がへこみながら呼吸をする、いわゆる“陥没呼吸(かんぼつこきゅう)”を認めることもあります。
そのほかに、いびき、喉(のど)の渇き、倦怠(けんたい)感、頭痛、長時間の昼寝、夜間の体動・覚醒、就寝・起床時間の遅延、寝起きの悪さ、食べ物が飲み込みにくいため食事時間が長い(扁桃肥大(へんとうひだい))、集中力の欠如・学力低下、落ち着きがない・多動・人格変化(攻撃的、内向的になる)などの行動異常、睡眠リズムが崩れ昼と夜が逆転することによる不登校、などが報告されています。
さらに重症化すると、成長ホルモンの分泌障害に伴う痩(や)せを伴った低身長や、利尿ホルモン分泌障害による夜尿など、多種多様な症状が報告されています。
小児の睡眠時無呼吸の検査・診断方法は?
小児の場合には、耳鼻咽喉科、小児科、そして小児歯科での診察に加え、自宅で睡眠中の様子を記録する携帯型装置を用いた検査が一般的です。
また、必要があれば検査入院をして、脳波、心電図、呼吸センサーを使う本格的検査もあります。
これらの検査で、睡眠1時間当たり、無呼吸や低呼吸が1回以上認められれば、小児閉塞性睡眠時無呼吸(しょうにへいそくせいすいみんじむこきゅう)と診断されます。
小児の睡眠時無呼吸の治療方法は?
まず、鼻症状があれば薬による治療を行い、よくならない場合、アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術(こうがいへんとうてきしゅつじゅつ)を行うのが一般的です(図1 小児の睡眠時無呼吸の原因と治療)。
しかし、それでも症状が改善せず、かつ、上顎歯列が狭い場合や下顎が小さい場合、正常な顎の大きさになるまでの歯科的治療が検討されます(図2)。
小児の睡眠時無呼吸の予防方法は?
小児だけでなく、将来の睡眠時無呼吸の予防としては顎顔面(がくがんめん)の正常な成長発育が重要だと考えます。 そのためには小児期からう蝕(しょく)(むし歯)だけでなく、歯列や咬合(こうごう)などの顎顔面形態や口腔(口の中)の機能に着目した定期管理を受けることが必要です。
小児のいびきや、口呼吸なども睡眠時無呼吸との関連が指摘されています。気になる場合は医療機関にご相談ください。
小児歯科の特徴
診療科長・教授 岩崎 智憲
※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。
特色
当科では小児の睡眠時無呼吸の歯科的治療について、臨床・研究の両面から積極的に取り組んでおり、世界の睡眠医学の中心といわれる米国スタンフォード大学への研究留学と共同研究を通し、最新の治療と研究を展開しています。
特に徳島大学で用いる流体解析を活用した呼吸状態を再現して評価する呼吸シミュレーション(特許等複数取得)は、これまで20以上の国内外の大学や病院から共同研究・解析依頼を受け、客観的に高い評価を受けています(外国語論文も20編程発表)。
また、当科は障害のある患児(者)さんを担当する障害者歯科も兼務しています。そのため、ダウン症、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)、脳性麻痺(まひ)、その他の顎顔面形態に異常がある方が受診され、これらの方は睡眠時無呼吸であることが多いため、早期発見と適切な治療につなげることが可能です。
主な対象疾患
睡眠時無呼吸、おくちぽかん、口呼吸、いびきなど