低侵襲(ていしんしゅう)モニタリングとは?
歯の治療中の血圧や脈拍の変動、体の状態の変化をリアルタイムで見守り、安全性を確保するために、さまざまなモニタリング機器が使用されます。
非侵襲連続推定心拍出量(ひしんしゅうれんぞくすいていしんはくしゅつりょう)(esCCO)は自動血圧計、モニター心電図計、パルスオキシメーターで心臓の動きを連続的に見守ることができます。血管の中へカテーテルを挿入していたこれまでの方法に比べ、体を傷つけること(侵襲)がなくなります。
モニタリングとは?
歯の治療では、緊張や痛みなどにより血圧の変動や、動悸(どうき)を認めることがあります。
モニタリングとは、こうした体からの情報をリアルタムで見守る技術で、自動血圧計、モニター心電図計、パルスオキシメーターなどがあります(写真1、写真2、写真3)。さらに、カプノグラフやBIS(ビス)モニター、観血的動脈圧測定(かんけつてきどうみゃくあつそくてい)などさまざまな方法があります。
低侵襲のモニタリングとは?
低侵襲モニタリングは、痛みや苦痛などの体への負担の少ないモニタリング技術です。
非侵襲連続推定心拍出量(esCCO)は腕につけた血圧計、モニター心電図計とパルスオキシメーターで、心臓から送り出される血液量(心拍出量)を連続的に算出する方法です(図)。心臓のポンプとしての働きを見守ることができます。
これまでの方法は、頸(くび)の血管や足の付け根の血管へカテーテルを入れて、心臓から肺まで進めて測定する方法でした。esCCOは血管を刺す痛みなどの苦痛を伴うことなく心臓の働きを見守ることができます。
注射が怖くて歯の治療ができない?
歯の注射などが怖い患者さん、嘔吐(おうと)反射(はんしゃ)(口に異物が入ると吐き気をもよおす)が強く歯の治療が難しい患者さんなどは、精神安定薬や静脈麻酔薬の点滴や麻酔ガスを吸入する精神鎮静法(せいしんちんせいほう)を併用した治療を行います。 意識は保たれたまま、緊張がとれてリラックスした状態で快適に歯科治療を受けることができます。
全身麻酔で歯の治療をすることがある?
局所麻酔での治療が難しい患者さん、精神鎮静法での治療が難しい患者さんには、全身麻酔で眠っている間に歯の治療を行うことがあります(写真4)。
歯の麻酔で“ドキドキ”する?
歯の治療で、痛みを伴う場合は局所麻酔を行います。このときに使う局所麻酔薬にはアドレナリンという成分が含まれており、麻酔薬の効果を高める働きがあります。
アドレナリンには動悸(心拍数の増加)の副作用があります。注射後から数分以内に起こり、10分ほどで徐々になくなります。不整脈など心臓に病気のある方、高血圧のある方などは、動悸の副作用が強く出ることがありますので、前もって歯科医師に伝えてください。患者さんの状態を考えて副作用の少ない最適な麻酔薬を選択します。
歯科麻酔科の特徴
診療科長・教授 川人 伸次
※所属・役職は書籍発刊時(2024年3月)のものです。
特色
局所麻酔での歯科治療など、通常の治療が難しい患者さんや快適で安全な治療を希望する患者さんの歯科治療に対応する診療科です。
- 【手術部での麻酔管理/全身管理】
-
口の中の手術を行う口腔外科手術の麻酔管理を行います。
- 【全身麻酔下での歯科治療】
-
さまざまな理由により通常の歯科治療が難しい患者さんに、歯科治療時の全身麻酔管理を行います。
- 【精神鎮静法を用いた歯科治療】
-
歯の治療が怖くて受けられない患者さん、嘔吐反射が強くて歯科治療が難しい患者さん、快適で安全な歯科治療を希望される患者さんなどに精神鎮静法での歯科治療を行います。
- 【モニター管理下での歯科治療】
-
歯科診療中に緊張や痛みで体調が悪くなったり、持病が悪化することがあります。このような患者さんには、心電図計や血圧計でのモニタリングを行いながら歯科麻酔科医の見守りの下で治療を行います。
主な対象疾患
歯科治療に対する不安・恐怖症、歯科治療時に障害となる嘔吐反射